出店可能な売り場面積に関する議論がヤマ場を迎えている東名高速道日本平久能山SIC南側の宮川・水上地区＝4日、静岡市駿河区（静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から）

　静岡市駿河区の東名高速道日本平久能山スマートインターチェンジ（SIC）周辺のまちづくりで、誘致する商業施設の規模を巡る議論がヤマ場を迎えている。静岡市がこれまで都心部への商業集積を推進してきた中で、売り場面積1万平方メートルを超えるような大規模施設を認めるかが焦点。地区計画で定めた県外、市外からの集客目標に向けて規制緩和を求める声が上がる一方、中心市街地などへの影響を懸念する意見も根強い。 　市は2013年施行の良好な商業環境形成条例の指針で、都心部以外の商業施設売り場面積を最大8千平方メートルに制限し、静岡、清水、東静岡の各駅周辺へ大型施設を集積させる政策を進めてきた。 　一方、日本平久能山SIC南側の宮川・水上地区では、8月に地区計画決定した55・8ヘクタールのうち、約32ヘクタールを「広域交流ゾーン」に位置づけ、県外からの集客に向けた施設集積を図るとした。同条例指針に基づく商業施設の立地条件について昨年から、有識者や商業関係者で構成する市商業振興審議会での議論が続いている。 　7月に行われた同審議会の会合では、委員から「市外、県外からの集客を考えるのであれば、1万平方メートル前後の店舗面積がないと魅力が出せない」（上西征直・松坂屋静岡店長）との意見が出た一方、「本当に商業施設が必要なのか疑問」（中村陽史・市中央商店街連合会会長代理）などと慎重な意見も相次いだ。 　宮川・水上地区が指定された用途地域の準工業地域では別の条例に基づき、延べ床面積1万平方メートル超の集客施設は原則制限されるため、こうした関係法令との整合性も今後の課題となる。 　市は意見を集約した上で9日に予定する商業振興審議会会合で具体的な商業ゾーン案を提示する方針。パブリックコメントを行い、年内にも最終決定する考え。ゾーン決定後、土地区画整理組合の業務代行者と、進出を検討する業者との交渉が本格化するとみられる。 ＜静岡市良好な商業環境の形成に関する条例＞ 人口減少、高齢化社会が進展する中、JR静岡、清水、東静岡の各駅周辺を核にしたコンパクトシティ形成に向けて大型商業施設を集積する一方、各地域に個店や商店街など多様な買い物環境を維持する目的で制定された。条例指針で市街化区域を地域特性別に5種類にゾーン分けし、都心部以外では店舗の売り場面積を上限1000～8000平方メートルに制限した。全国的にも珍しい内容で、条例案が市議会で審議される際、県内外のスーパーなど10社が共同で「物販店舗の自由競争を阻害する」として条例制定に反対する意見書を提出した。