スクエニ・浜口氏、「FF7リバース」クラウドとティファのキスシーンについて意図を語る
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が開催する「PlayStation Partner Awards 2024 Japan Asia」にて、「GRAND AWARD(グランドアワード)」を受賞した「FINAL FANTASY VII REBIRTH」(以下、FF7リバース)ディレクター・浜口直樹氏のメディアインタビューが実施された。 【画像】スクウェア・エニックス ディレクター 浜口直樹氏 「PlayStation Partner Awards」は、クリエイターの創作活動に敬意を表し、プレイステーション向けに発売されたヒットタイトルに賞を贈呈する式典。初代プレイステーションが発売された1994年から始まり、今年で通算30回目の開催となる。 その中で、「FF7リバース」が日本・アジア地域で開発されたソフトウェアメーカー各社様のタイトルにおいて、2023年10月から2024年9月までの期間中に発売され、全世界売上の上位3タイトルに贈られる「GRAND AWARD」を受賞。ディレクターである浜口氏がメディアインタビューにて現在の心境、そしてゲームの開発にまつわるエピソードなどを語ってくれたので、本稿ではその内容をお伝えしていく。 ■ スクウェア・エニックス「FINAL FANTASY VII REBIRTH」ディレクター 浜口直樹氏 インタビュー 浜口氏:まずは「GRAND AWARD」の受賞、大変嬉しく思います。年末にさしかかって各地域でいろんなアワードが開催されてますが、今日の「PlayStation Partner Awards」のグランドアワードに関しては、ほかのアワードとは違って、世界での売上での評価というところで、ユーザーの好みというところではなく、ビジネスでの観点という評価というのは私自身、非常に嬉しく、とても光栄に感じています。このタイトルを一緒に作ってきたチームにも感謝しております。 ――「FF7リメイク」から続く2作目となるタイトルですが、前作のノウハウから今作の制作に活かされたポイントなどがあれば教えてください。 浜口氏:「ファイナルファンタジー」のフランチャイズは今まで1本作って次のナンバリングタイトルを作る際に比較的にチーム構成が大きく変わることが多いんですが、今作のプロジェクトに関しては開発チームの母体がそのまま「リメイク」から「リバース」を作るって感じで流れています。そういう意味では1作目を作ったノウハウはそのまま引き継がれ、さらにそこから大きなチャレンジができたというところは、作品のクオリティに大きく繋がったと思います。 ――前作をプレイしたユーザーからのフィードバックを受け、今作で新たに反映したことなどあれば具体的に教えてください。 浜口氏:1作目はミッドガル脱出という流れの中で、早い展開でのストーリーラインだったので、ジェットコースターのような体験をもたせるというゲームデザインでした。ユーザーとしてはストーリーは重要だけど、その中でどう自分らしく世界観に触れ合えるかどうかというのが今の時代に求められるところだと思うので、「リメイク」を出したあとにそこは自分自身も感じていたし、ミッドガルをもっと自由に探検したかったというのはあると思います。 2作目の「リバース」ではワールドマップという広大なところを冒険できるようになるので、そこの中でユーザーの観点で自由に探検し、自分なりに攻略してもらうというのを実現したかったということが、2作目を作るうえで強く思ったところです。 ――本作の制作においては、三部作の二作目ならではの難しさやプレッシャーがあったかと存じますが、どう乗り越えられたのでしょうか? 浜口氏:プレッシャーという部分はないわけでないんですが、私自身、オリジナルの「FF7」を1ユーザーとしてプレイしていたので、今自分が手掛ける立場になるというのは、プレッシャーもあるんですけど、楽しく、ワクワクしながら制作しているというのが本音ですかね。 開発チームも私と近い年代が多く、子どもの頃に「FF7」をプレイして影響を受けてクリエイターになったという人間が、日本人だけでなく多国籍で、幅広く開発に関わっているスタッフがいるので、チーム全体が「FF7」に対してリスペクトを持っているので、そういう意味では楽しんで開発をしているというのが本音ですね。 ――広大なフィールドが用意されているという点など、1作目と大きく異なる部分も多いと思いますが、最もチャレンジングだった部分と、それに対する手応え、ユーザーの反応について教えてください。 浜口氏:今作はストーリーを重視するというのはもちろんですが、ワールドマップに対していかに広大さとか、スケール感とか、ユーザー自身がどう探索してどう体験できるか、というところを実現するというのが、「FF7」の2作目にとってはとても重要なことだと考えていました。なので、そこに対してのチャレンジというのはすごくプライオリティを高く開発してきました。開発当初の試作段階ではとにかくワールドマップの広さをしっかり定義して、そこにどれくらいのコンテンツ量を置くかというのをあらかじめ決めるということにすごく時間をかけていました。 「FF7」は原作ありきのものなので、世界を冒険しながら探索していくというのを実現しないといけなくて、とはいえ、実際の世界スケールの広さを実現するというのは難しいので、でも、色んな大陸を渡っているな、というのを感じれる広さ、だけど、実際に開発できるギリギリのところを定義するというのがチャレンジングであったし、楽しい部分でもあったなと感じています。 結果として、自由度をもって探索できて、そこに対してミニゲームやコンテンツなどいろんなものがあったということは、多くのユーザーやメディアから良い評価を受けたと思っていて、そこに対して手応えを感じたので、次回作にも活かしたいと思っています。 ――ユーザーからの反響が大きかった要素を教えてください 浜口氏:私はゲームをディレクションするときにチームに1つのコンセプトを提案するんですが、今作においては「絆」というのを掲げていました。なので、バトルにおける連携技だったり、サイドコンテンツであればクラウドと仲間たちとの関係性を表現したり、それがデートのイベントに繋がったりするんですが、それがユーザーにすごく届いて反響が良かった、というところは手応えとして感じたので、そこはやってよかったというか、記憶に残った点ではあります。 ――「FF7」を再構築するうえで最も重要視した部分をお聞かせください。また、3作目についての意気込みなども教えてください。 浜口氏:リメイクの作品なんですが、分作でもあるので、原作とまったく同じものをただ作り直すっていうだけだとどうしてもユーザーの興味が薄れてしまうので、そこに対して何かしらのエッセンスを加える必要があるというのは絶対にやらなければいけないと思っていました。 ただ、それがパロディというか、全く違うものになってしまわないようにするというのをすごく気をつけました。なるべく原作の要素というのをリスペクトしながら、当時のゲーム機のスペックでは表現できかなったものなども最新ハードでより幅広いディティールで表現できるようになっているので、懐かしくて新しい感じをユーザーに届けたいということをすごく思っていたので、その辺りを1作目、2作目ではものすごく注意して作っていて、3部作目に対しても同じ心意気で作る必要があるかなと思っています。 ――作中のゴンドラデートにおいて、ティファとのキスシーンが描かれました。これは初代「FF7」発売から27年間ではじめてのことであり、ファンに大きな衝撃を与えました。どのような意図でこのキスシーンを実装したのでしょうか? 浜口氏:すごいマニアックな質問ですね(笑)。そうですね、実は明確な意図がありまして、1作目(リメイク)でも最後の新羅ビルに向かうところの分岐のイベントのシーンのときに、クラウドがティファを抱きしめるシーンがあったんですね。で、リメイクからリバースへ繋がったときに、クラウドもやっぱり成長していってほしいというのがありまして、1作目で抱きしめたのであれば、2作目ではそれ以上を求めたほうがいいんじゃないかというのがチーム中で話になったので、その中であのような表現になったというのがあります。 ――「リバース」発売後のユーザーの反響を受けて、次回作の制作において元の構想から大きく変更したところはありますか? 浜口氏:ゲームの設計、デザインからは大きく何か変更したということはないんですが、ただ1点、ものすごく反省していて、3作目で直さないといけないなと思ったのは、今回ものすごくゲームコンテンツ量が多かったので、それを全てのユーザーが全部のコンテンツをプレイするという割合がすごく少なかったんです。これ自体悪くないと思うんですが、そことトロフィーを繋げてしまったので、トロフィーの入手率が2%とかになっていて、あれはやり過ぎたと反省しています。3部作目はもっと易しいトロフィーにしようかなと考えています。 ――今回の受賞を受け、ユーザーの皆様へメッセージをお願いします。 浜口氏:「FF7リバース」は2月に発売してかなり経ちますが、日本をはじめ、アジア圏、中東なども含め色んな地域に行って、メディア、ファンコミュニティと接する機会を作ってきました。20年以上前に「FF7」というIPが日本から発信され、それが本当に多くの国、たくさんの人に愛されているというのを私自身すごく実感しました。3部作目の制作を進めていますが、多くの人の心にしっかり届くタイトルに仕上げ、フィナーレにしたいと思っていますので、ぜひ期待して待っていただければと思います。今日はありがとうございます。
GAME Watch,徳永浩貴
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