「受験期の親は俳優になれ」 塾60校が説く本当にやるべき「中学受験」の直前対策とは
全国61の塾関係者に取材した結果……
さて、中学受験は「親子の入試」とも言われる。親の助けなしでは成功はしない入試だ。よって、最新の入試動向や細かい変更点などの情報は、受験生の親であれば欠かさず収集していることだろう。しかし、保護者も受験する本人も入試が迫ってきて余裕がなくなってくるこの時期、入試のテクニック以外のことはついつい軽視されがちだ。 筆者が中学受験指導を行う全国61の塾関係者に取材したところ、そのうち55もの塾が、直前期には受験勉強以外のことも重視すべきだと指摘した。それは主に、「親と子どもの関係性」についての事柄だ。 これは、入試直前の保護者面談で、中学受験指導のスペシャリストたちがこっそりアドバイスしていることである。いったいどういったことなのか。取材対象者の過半数が重要と回答した主なものを一部ご紹介したい。
直前期の記憶は一生刻まれる
改めて、受験生である自分の子どもが勉強する姿を見てほしい。まだ幼心を残した小学生の小さな身体で、親からの期待に応えようと一生懸命がんばっている。入試直前の親とのやりとりは、子どもの印象に強く残る。それは勉強の時に留まらず、その合間に行った家族旅行や何気ない会話すべてである。 「直前期になって模試などで思うような結果が出ないと、保護者はついつい子どもに対してイライラしがち。なかには怒鳴りつけることも珍しくありません。できないことを子どもに対して論理的に攻めてしまう親も多いですが、正しいことを言っていてもそれは、逆効果になります」(東京・大手中学受験塾関係者) ご自身の小学生の頃を思い出してみてほしい。親の影響は絶大だったはずだ。だからこそ子どもは、入試直前に「あなたは努力した。なんとかなる!」という言葉をかけられると気が楽になるものなのだ。 「親子で乗り越えようと頑張る受験対策の日々は、大人以上に子どもに負荷を与える。だから、塾関係者のなかには、『受験期の親は俳優になれ』と訴える人もいるほど」(京都市・大手中学受験塾関係者) うまくいかないことがあったとしても、直情的に怒るのではなく、忍耐強く、時には笑って子どもを包み込み、自分を演じることが必要になる。子どもをその気にさせて、最高潮の状態で入試を迎えてもらう。そして、子どもに本心を話させる隙を与えよう。特に入試直前期は、親の“余裕”が子どもを勇気づけるのだ。 〈後編の記事【かけてはいけない言葉とは? 前泊する場合の注意点は? 「中学受験」直前にやってはいけない意外な“落とし穴”】では、本番に向けて子どもの士気を高める方法や、直前期にこそ注意すべき“落とし穴”などについて解説している。〉
西田 浩史(にしだ ひろふみ) 追手門学院大学客員教授、ルートマップマガジン社 取締役・編集長、教育ジャーナリスト。2016年ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者、塾業界誌記者を経て、19年追手門学院大学客員研究員、20年から現職。全国5000にも及ぶ塾の関係者(計20,000人)を取材。著書に『大学序列』(週刊ダイヤモンド特集BOOKS ダイヤモンド社)など。 デイリー新潮編集部
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