<夏に咲く・2020甲子園交流試合>/下 成長の証し、聖地に 日本航空石川、星稜破った勢いに乗り /石川
16日の交流試合で鶴岡東(山形)と対戦する日本航空石川は、甲子園を目指す球児らが全国各地から集まり、切磋琢磨(せっさたくま)を続けてきた。勝っても負けても高校最後となる聖地での試合にそれぞれの思いを抱えて臨む。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 「勝ち負けではなく一生懸命やってきた証しを披露しよう」。交流試合開催が決まった6月10日、中村隆監督が声を詰まらせながらニュースを告げると、選手の中には涙を流す者もいた。その1人が井口太陽主将(3年)だ。 卒業後は地元の兵庫県に戻り、軟式野球の道を選ぶつもりだった。しかし今春のセンバツ中止に加え、夏の甲子園中止も決定。「正直、どうしたらいいのか分からなくなった。夏で完全燃焼したかった」。井口主将はここで終わらせるわけにはいかないと、硬式野球を続けるために大学進学を目指すことに。新型コロナウイルスの影響で3月中旬を最後にチームの練習は行われず、井口主将は約3カ月にわたって実家で素振りやダッシュを繰り返し、時を待った。 一方、交流試合を最後に選手生活に区切りをつけようとしているメンバーもいる。渡辺直斗選手(同)は卒業後は高校と同じ敷地にある日本航空大学校に進み、学生コーチとして母校に戻ることを目指す。「力の差はあっても、諦めなければレギュラーにもなれるということを後輩たちに伝えたい」 高校入学後、全国から集まったチームメートの実力を目の当たりにし、「このレベルでは自分は通用しない」と感じた。だがコツコツと努力を積み重ねた結果、昨秋の県、北信越大会では下位打線ながら6試合で5割8分以上の高打率をマーク。センバツを前に背番号5を中村監督から渡されるまでになった。 相次いで大会中止が決まる中、6月に全体練習が再開して以降は「これまで何のために練習してきたのか」と気持ちを見失ってしまった時期もあった。交流試合での背番号は「15」。チームメートの成長はめざましく、半年前ほど出場機会が保証されているわけではない。そんな中でも「みんなを助けられるような守備、小技を使ったプレーを見せたい」と選手としての集大成にしたい考えだ。 航空石川は9日に行われた県独自大会決勝で星稜を破って優勝。何度もはね返されてきた宿敵に勝った勢いのままに、大舞台に挑む。「甲子園に行けないチームに恥じないプレーをする。甲子園で勝って終わりたい」(中谷仁人捕手=3年)と闘志を燃やす。【井手千夏】