【呪い代行サービスをレポート】「自分を殺して」…”呪術師”に寄せられる「現代人の苦しみ」
道理では説明できない不幸や災難、憎しみや怨恨(えんこん)が具現化した何かの事象を、時に人は「呪い」と呼ぶ。呪いには何かしらの科学的根拠があるわけではない。しかし、そんな目に見えないエネルギーを頼りに、自身の恨みを晴らしたい・望みをかなえたいと願う人が、令和の時代にも後を絶たないという。 【閲覧注意】やばい…! 呪いの藁人形、五寸釘…おろしい呪いの道具たち…! そんな、にわかには信じがたい「呪い」のエネルギーを長年研究し、依頼者の代わりに呪術を試行する『日本呪術研究呪鬼会』(以下、呪鬼会)という組織が存在する。今回は、そこで行われる呪術代行の実態と事例、時代とともに変化した人々の内なる願いをのぞいてみよう(以下、カッコ内は呪鬼会担当者の発言)。 ◆呪いで悩みを解決? “呪術代行”の知られざる世界 「呪い」という言葉を検索してみると、黒魔術や白魔術、陰陽道の蠱毒(こどく)など多くの種類があるようだ。 呪鬼会では、ろうそく・五寸釘(くぎ)・藁(わら)人形を用いる日本古来の「丑(うし)の刻参り※」という呪いを主な手法とし、在籍する呪術師が相談内容に合わせて呪術を施していくという。 ※:丑の刻参り:丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に藁(わら)人形を釘で打ちつける、日本に古くから伝わる呪いの一種 担当者によれば、呪術代行時の基本的な流れはこうだ。まずは相談者の悩みと呪う対象にあたるターゲットの詳細をヒアリングする。名前、住所、生年月日、写真などの必要事項を聞いたら、先述した「丑の刻参り」の作法に則り、藁人形に念を入れ五寸釘を刺す/藁人形に写真を編みこむ/藁人形を燃やすなど、独自の手法で呪いをかけていくという。 そんな呪鬼会には、どのような相談者が多いのだろうか。相談者は30代から40代の女性が多く、物理的・現実的手段では解決できそうにない悩みを抱え、呪鬼会の門戸をたたくケースが多いらしい。 聞くところによると、いじめの仕返しや報復といった相談から、“虐待してきた親を呪いたい”という相談もあるそう。幼少期のトラウマを晴らしたいという人や、大人になっても虐待され続けている場合があり、なかには「婚約者を親に寝取られた」という相談もあったという。 また彼らが提唱する術式のひとつに「死術」というものが存在する。読んで字のごとく、呪った対象を死に追いやる呪術で、相談者や呪術師の手を加えずにターゲットを殺める術式だというが、驚くべきは対象の死因や場所も指定が可能だというのだ。 相談者から「保険金が欲しいからターゲットを殺してほしい」「自分の目の前で相手が死ぬところを見たい」などの具体的な相談が寄せられるそうだが、果たしてそんなことは可能なのだろうか。 にわかには信じがたいが、実際に死術の効果が出ることも少なくないと、担当者は主張する。また、過去には死術の効果を待たずして、相談者が自身の手でターゲットを殺してしまった事例もあるそうだ。 重めの内容が続いたが、意外にも呪鬼会に寄せられる相談の70%は「恋愛成就」であり、「両思いになりたい」「ダイエットしたい」といったピュアな相談もある。このような“対象を貶(おとし)める相談ではない場合”、丑の刻参りにて五寸釘は使われないらしい。 しかし、同じ片思いの相談でも、中には不倫相手と両思いになるために、不倫相手の奥さんを殺してほしい・妊娠中の子供を堕ろしてほしいという依頼もある。また職場内不倫の末、自分を捨てた男性を呪い殺したいという相談もあるそうだ。呪いつながりで人気マンガ『呪術廻戦』のセリフを引用させてもらうが、「愛ほど歪(ゆが)んだ呪いはない」とはこのことだろう。 ◆ネットの急速な発展により現代社会が生んだ新たな呪い 最近ではSNSの発達もあり、顔も見たことのない人と結ばれたいという利用者や、LGBTQの恋愛相談など、時代や時勢によって変化している。また担当者曰(いわ)く、最近は“自分に死術をかけてほしい”という相談が多くなってきているという。 「この数年で、生きるのが苦しいから死にたいという人が多くなり、そのほとんどがコミュニケーション能力に難を感じている相談者です。インターネットやSNSの影響もあり、相手の顔を見ずとも表面上のコミュニケーションが成立する時代になった。でも、いざ社会に出たらそうではなく、組織の一員として周りに合わせ、時には理不尽なことも耐えなければいけない瞬間は多くある。われわれにとってそれは当たり前かもしれませんが、それが苦痛で、でも自分で死ぬ勇気はない。だから呪いで殺してほしいという人が増えました。人との出会いに恵まれていれば、そうは思わなかったのかもしれません」(担当者) 呪鬼会には1日10件~30件もの相談が来る。相談内容は、出世したい/宝くじを当てたいといったカジュアルなものから、人の生死にかかわる禍々しい呪いまで幅広い。重ねるが、呪いに何かしらの根拠があるわけではない。しかし、確かにその効果を信じ、悩みを解決しようとする相談者は存在する。救われる人がいる限り、呪術代行はこれからも続いていくだろう。 取材・文:FM中西
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