韓国、首相が大統領職務代行 野党は批判、2度目の弾劾案提出へ
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「非常戒厳」を宣布したことを巡り、韓国の韓悳洙(ハン・ドクス)首相と与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は8日会談し、今後の対応を協議した。会談後、両氏は「共同談話」を発表。韓代表は尹氏に早期退陣を改めて求めたうえで「退陣前でも大統領は外交を含む国政には関与しないだろう」と強調。事実上、韓首相が国政運営を担うと説明した。 【写真まとめ】肖像画が人気 主な韓国大統領 一方、最大野党「共に民主党」は8日、11日に開会する予定の臨時国会で尹氏に対する弾劾訴追案を提出し、14日に採決すると発表した。国会は過半数を占める同党が主導権を握る。だが弾劾案は与党から8人以上の賛成が出ない限り可決できない。野党は否決される度に、毎週土曜に採決する構えだ。 韓代表と韓首相は会談後、記者団の前にそろって姿を現した。韓代表は、国民の多数は尹氏が「正常な国政運営ができず大統領職から退くべきだ」と考えていると指摘。「秩序ある大統領の退陣」によって「混乱を最小限に抑え、国民と国際社会の不安を解消し、国民の生活と国の尊厳を回復させる」と説明した。 韓首相は、日米や友好国との信頼関係を維持するため「外相を中心に内閣が最善を尽くす」と強調。「与党と共に知恵を集め、国家機能を安定的かつ円滑に運営する」と述べた。そのうえで、政府提出の予算案や法案の早期可決に向け、野党に協力を呼びかけた。 国会は7日、尹氏への弾劾案を採決したが、与党議員の大半が投票せず廃案となった。韓代表と韓首相は国政の「早期安定」が重要だと強調することで、弾劾以外の方法に理解を得たい考えとみられる。 尹氏は7日の弾劾案の採決に先立ち、自身の任期や、政局を安定させるための方策を与党に一任すると表明した。与党内からは、大統領の任期を1期5年から2期4年にする改憲をしたうえで、尹氏が1期目で辞任する案が出ている。辞任までの間は韓首相に国政運営を委ねるという。 ただ、大統領として強大な権限を握る尹氏が、本当に国政に口出しせずに韓首相に職務を任せるかどうかは不透明だ。 また、野党は韓首相が事実上、大統領職務を代行すれば「違憲だ」と批判する。共に民主党の金民錫(キム・ミンソク)最高委員は8日、首相に外交権や軍の統帥権などを行使する権限はないとし「国政運営の中心になるのは憲法上不可能だ」と指摘した。憲法は首相が大統領職務を代行できる条件を「大統領が空席となったり、事故によって職務が遂行できなくなったりする時」と規定しており、今回の事態を巡り韓国内でも議論が起きている。【ソウル日下部元美】