じゃんけんはどの手を出すと勝ちやすい?10000以上のデータから明らかになった驚くべき「法則」
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第4回 『「京都大学の入試問題」もラクラク理解できる! 幅広く応用が利く「樹形図」の考え方』より続く
統計の考え方
様々な分野で必要になった統計分析の基礎に関して学ぼう。 信頼できる統計を得るために誰でも思い付くことは、偏りのないデータをなるべく多く集めたほうがよい、ということである。 AかBどちらを支持するかというアンケートを1000人と1万人を対象に行った結果、1000人調査ではAが528人、Bが472人、1万人調査ではAが5103人、Bが4897人という結果になったとする。 この場合、「1000人調査ではAが53%、1万人調査ではAが51%なので、1000人調査からはAが有利といえるものの、1万人調査からは微妙であるといえるだろう」と思う人達は意外と多い。 ところが「有意水準5%」という「検定」の考え方を用いると、 1万人調査のデータからは「Aが有利」といえ、1000人調査のデータからは「Aが有利」とはいえないのである(拙著『新体系・高校数学の教科書(下)』を参照)。 そのように統計分析では、割合の「%」だけでなく、「データ数」も検討することが大切なのである。
質問の「仕方」が重要
また、アンケートなどの統計調査の段階でも重要な問題がある。それは質問の「仕方」である。以下の例からも分かるように、調査結果に重大な影響を与えるからである。 (1)世界中から日本の景気回復を期待されている状況を説明したうえで、さらなる景気対策の是非を質問する場合と、日本の国債や地方債の残高を説明したうえで、さらなる景気対策の是非を質問する場合。 (2)先に趣味を尋ねた後に購入したい品物を尋ねる場合と、先に購入したい品物を尋ねた後に趣味を尋ねる場合。 (3)会社内で調査するとき、上司を気にしなくてもよい場合と気にしなくてはならない場合。 (4)時間を十分にかけて質問する場合と、急いで手短に質問する場合。 およそ統計に関しては興味ある話題がいろいろある。 以下、「じゃんけん」について述べていこう。 大学入試の数学問題において、コインの表裏の確率はどちらも2分の1であること、サイコロの各目の確率はどれも6分の1であること、これらは暗黙の了解として「仮定」に含まれている。 実際、そのようなことを「仮定」として書いてある入試問題は見たことがない。