“日本人女性”も巡礼する「チベット仏教聖地」、敏腕TVディレクターが見た驚きの世界 標高4000m「天空の村」で、たくましくも心豊かに暮らす人々、そして花開いた“独自の芸術”とは?
世界36カ国を約5年間放浪した体験記『花嫁を探しに、世界一周の旅に出た』が話題を呼んでいるTVディレクター・後藤隆一郎氏。 【写真で見る】「まさかの場所」で出会った旅する“日本人女性”の素顔と、「チベット仏教聖地」驚きの世界 その後藤氏が旅の途中で訪れた、ヒマラヤ山脈にある辺境の地、チベット仏教の聖地「スピティバレー」で出会った「標高4000mに暮らす人々」の実態をお届けします。 *この記事の前半:標高4000m! TVマンが単独で目指した「天空の村」 ■チベットの定番料理、モモに舌鼓 「ごっつさん」
遠くのほうから、日本人女性の声が聞こえてきた。 「カナさん!」 そこには、ラフなタイパンツに黒い洋服、首にはベージュ色の大きなマフラーを巻いたカナさんの姿があった。マフラーの上からヒマラヤ山脈の雪のような白い布を纏っている。その出立ちは、山の女神さまの化身のように思えた。 その後、二人で近くの食堂に入り、野菜のモモを注文した。モモは小籠包のような形をした蒸し餃子で、辛いタレをつけて食べる定番のチベット料理。
「俺、バシストのフジ食堂で分けてもらった醤油を持ってきてるんだよね」 「え、本当ですか? 酢は持ってきました?」 「酢もくださいって、さすがに言えなかった。醤油だけでも十分でしょ」 チベットの村ではモモが続く可能性があるため、他の情報はほとんど調べてこなかったが、醤油だけはペットボトルに入れて持ってきたのだ。醤油さえあれば、どんな料理も美味しくなる。 「あぶね~、ペットボトルがパンパンに膨らんで破裂しそうになってる」
標高2000mのバシストと3650mここでは高低差が1600m近くある。 「ここに来るまでの道、4500m超えの山がいくつかあったから、破裂していてもおかしくなかったですね」 「荷物が醤油まみれになったら、完全に終わってたわ」 インドの旅人の間で有名な「世界一危険な道」には、道路状況だけでなく、こんな危険も孕んでいたようだ。 膨れ上がったペットボトルを見ながら、二人で軽く笑った。そして、醤油に辛いタレを少し混ぜ、美味しいモモを堪能した。