30歳俳優の怒りの演技に衝撃。“父親”光石研との掛け合いが挑戦的だと言えるワケ
シネマモードの赤楚衛二
画面は全編、暗いトーンに満ちている。光と影のコントラストが際立ち、ガラスを通した赤楚も俄然シネマモードで写る。シネマトーンが、シリアスな物語をより映画的なテレビドラマとして感じさせる。 ドラマと映画の演技は似て非なるものだが、赤楚はどちらでも実力を発揮するタイプである。テレビドラマでありながら、グッと映画的に力が入る。そんなシネマモードの赤楚の一助となるのが、光石研の存在だ。 日本を代表する名優である三石は近年、父親を演じることが多い。『最愛』(TBS、2021年)では、吉高由里子の父親役としてほんとうに切ない雰囲気を情感たっぷり漂わせた。海斗の父で天堂記念病院の理事長・天堂智信を演じる光石の包容力があればこそ、その胸を借りて赤楚はその胸を借りて自由に演技できる。
これまでの役柄とは違うところ
実際、本作の赤楚は、かなり大胆に感情をむき出しにする。基本的にはもっさり感かつ正義感強めのキャラクターを、静かさの中で熱く演じることが多いが、ここまで相手に怒号を浴びせることはあまりなかった。 これがこれまでの役柄とは違うところ。喜怒哀楽をまんべんなく役柄として調合してきた赤楚が、“怒の一点集中”で踏み込む。その沸点が迫真の演技とかそういうことじゃない。 怒りそのものというか、怒りの塊みたいになって画面上で感情を叩きつける。赤楚自身、結構挑戦的な試みとして演じているように思う。今回ばかりは、何ふり構わずに一度ガツンとやってみようみたいな。
怒りの人を演じること
第1話を見ていると、感情がむき出しになるのは、大抵が光石との場面であることがわかる。海斗は智信のことを理事長の席にしがみつく権力者だと思っている。自分を利用してまで権力にしがみつくなと。 智信が病に倒れ、新プロジェクトの責任者として海斗を呼び戻そうとするが、断固拒絶する。理事長室だろうと、父が目を覚ました病室だろうと、構わずに怒りをぶつける。 でも智信は、幼少の頃に大病を抱えていた息子を一心に思っているだけなのだ。それが海斗には伝わらない。すれ違う。またしても切ないお父さん役……。「怒鳴れるぐらい大きくなった」と笑ってみせる智信の嬉しそうな表情がもうね。 思えば、光石も昔は『Helpless』(1996年)など、破天荒なやくざ者の役で怒りの暴力をあたり構わず撒き散らしていた。赤楚は怒りの人を演じることを光石から引き継いでいるともいえる。 この父子のすれ違いには光石へのリスペクトという回答が込められているのかなと筆者は思ったりする。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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