大阪の地下鉄とバス民営化でどう変わる? 担当者に聞いてみた
今年3月に、大阪市議会で大阪市営地下鉄・バスの民営化に関する条例案が可決された。これにより、来年4月から大阪の地下鉄とバスは、市営ではなく民間会社によって運営されることになる。でも、そもそも民営化とはどういうことなのか、民営化によって何が変わるのか、など疑問を持つ方も多いだろう。そこで今回は、大阪市交通局の担当者に詳しく聞いてみた。 【拡大写真付き】大阪の地下鉄民営化基本方針案の争点「今里筋線」とは?
民営化はいつごろから議論してたの?
──地下鉄・バスを民営化する話は、いつごろから議論されているのですか? 担当者:大阪市では2005年に市政運営の抜本的な改革を図るため、組織と事業の総点検を始めました。これは、大阪市が行なっている多くの事業について、市役所組織で継続するのか、独立行政法人など他の組織形態へ見直すのかといった検討です。この中で、交通局が運営する地下鉄・バス事業についても検討が進められました。 2011年11月に「地下鉄・バスは完全民営化」とした橋下前市長が当選したことで議論は加速し、2012年6月に、地下鉄事業については「上下一体での民営化」、バス事業については「地下鉄事業とは完全分離して運営、かつ民営化」との基本方針が示されました。 この基本方針を受けて、民営化に向けた具体的検討を進め、平成25年(2013年)5月に「民営化基本プラン(案)」を取りまとめたのに続き、バス事業は大阪市の外郭団体である大阪シティバス(株)に一括譲渡する方針を、地下鉄事業は大阪市が100%出資する株式会社とする方針を示し、議論を重ねてきました。 そして、2016年12月に民営化に向けた基本方針案が成立、2017年3月に大阪市営地下鉄・バスの(市営としての)事業の廃止に関する条例案も可決されたことで、民営化が実現することとなりました。
なぜ地下鉄・バスを民営化するの?
──そもそも、なぜ地下鉄・バスを民営化するのですか? 担当者:将来、全国的な人口減少が見込まれており、大阪でも例外ではありません。そんな中でも、重要なインフラである地下鉄・バスは将来にわたって維持・発展させていかなければなりません。またバス事業は、多額の累積欠損金を抱えて資金不足に陥っており、事業体としては存続できない状態に陥っています。 これに対応するためには、市役所のルールにしばられ、物事を早く進められない、柔軟なサービス展開ができない「公営企業」ではなく、民営化することで市民・お客さまのご要望に素早く対応し、もっと喜んでいただける事業やサービスを展開することができるようになります。 ──いま、地下鉄やバスは赤字なんですか? 担当者:2015年度では、地下鉄は1日235万人のお客さまにご利用いただいており、年間の運輸収入は約1500億円にのぼります。経常損益も平成2003年度以降黒字を確保しており、2015年度は約370億円の黒字となっています。累積欠損金や資金不足はありません。 一方、バスは1日20万人のお客さまにご利用いただいており、年間の運輸収入は約120億円となっています。バスは長年赤字が続いていましたが、2013年度に約30年ぶりに経常損益で黒字となり、2015年度も約12億円の黒字となっています。ただし、累積欠損金は794億円、資金不足額も157億円にのぼっています。