未解決のまま進む「静岡リニア問題」…岸田が示した「静岡県のメリット」では静岡県民が不幸になってしまう!
川勝平太氏の後継者を決める静岡県知事選は、立憲民主党、国民民主党の推薦を受ける元衆院議員で浜松市長を4期務めた鈴木康友氏(66)と自民党推薦で元副知事の総務官僚だった大村慎一氏(60)は、両者がっぷりと四つに組む接戦となった。 【写真】川勝知事が残した“最悪の置き土産”…意味のなかった「リニア騒動」の全貌 5月13日に開催された県リニア地質構造・水資源専門部会を取材していて、県庁職員たちが大村氏寄りであることははっきりとわかった。 今回の会議では、これまでの言い掛かりを丸のみにして、JR東海の主張をそのまま認めた。森貴志副知事はじめリニア担当職員たちは、‟川勝色”をすべて一掃した上で、新たな知事を迎えたいようだ。 依然として残るリニア問題。解決したうえで、「メリット」を示せるのかという課題になっている。 自民党総裁の岸田文雄首相が「静岡県のメリット」を提案した。岸田首相の指示を受けた国交省は2023年10月20日、静岡県のメリットとして、「リニア開業後の東海道新幹線の停車頻度増加のシミュレーション」を発表した。 報告書の内容は、「リニア開業によって、のぞみの需要が3割程度減ることを想定して、ひかり、こだまの本数が増えて現状の静岡県内の停車数が1・5倍程度に増えること」を予測した。 この報告書に対して、川勝氏は「今度の国交省の発表は、内容がお粗末であり、あきれた」などと散々にこきおろした。 【前編】『川勝の後継者を決める県知事選で県庁職員90%が元副知事を応援することに「違和感」…脱川勝の裏で残り続けるリニア問題』
静岡県のメリットとは言えない
果たして、岸田首相の示した「静岡県のメリット」は本当にお粗末なのか? 静岡県内には新幹線停車駅が6駅もあるのに、毎日2百本以上ののぞみが通過するだけである。のぞみは1本も停車しない。 コロナ禍前の2019年には、1日平均でのぞみ230本、ひかり65本、こだま83本が運行されていた。2022年では、のぞみは207本まで回復、ひかり65本、こだま83本は変わらない。 ひかりは静岡、浜松の両駅で1時間1本、往復で1日15本程度しか停車しない。静岡県内のひかりの本数を増やすためには、のぞみの本数を減らさなければならない。 となると、のぞみ需要を3割減とした国交省案はこだまの本数が1・5倍増えることになりそうだ。つまり、こだまが1日83本から125本となる。現在、1時間に往復4本のこだまが8本となる計算である。 ただリニアができれば、のぞみの需要が減るのは当然のことであり、その隙間に運行されるこだま増便は当たり前過ぎる話である。 本当に「静岡県のメリット」とは言えるのか、誰もが首をかしげるだろう。