中村鶴松が“恐れていた役”に挑戦 ピュアでまっすぐなヒロインの 「ある決断」に観客が涙
七之助さんの強い推しとバックアップ
ふたりの女性から思われる久松を演じているのは七之助さんです。七之助さんはお染とお光とどちらの役も経験していて、鶴松さんの抜擢は実は七之助さんの強い推しがあってのことだったのだそうです。 「さらに久松での出演を買って出てくださったんですから本当にありがたいです。口では『朝(一番最初の上演演目)早いなぁ』とか冗談を言いながら、本当に丁寧に教えてくれています」 一般家庭から歌舞伎の道に入り勘三郎さんの“部屋子”となった鶴松さんにとって、勘九郎さんと七之助さんは血のつながりはなくとも兄そのもの。 「歌舞伎座で(師であり父と慕う)勘三郎さんの追善だからこそ、できたことだと思いますし、その公演で勘三郎さんゆかりの役でもあるお光を勤めさせていただけるのは感慨深いです」 鶴松さんがお光を演じていることを「何より喜んでいるのは父ではないでしょうか」と七之助さん。
客席のあちこちからはすすり泣く声が……
さて物語はお光の可愛らしい抵抗も虚しく、お染と久松は対面することとなり事態は一気に深刻化します。ここからがまさに「心情的に苦しい役」と鶴松さんが語る所以で、観客の舞台への集中力が高まっていきます。 そしてお光はある決断をし、思いきった行動に出るのです。事の詳細には触れませんが、そのいじらしい決心、切ない思いが劇場をひたひたと満たし、客席のあちこちからはすすり泣く声が……。
「鶴松の真っすぐなところがお光にぴったり」(七之助さん)
七之助さんから次のようなメッセージをいただきました。 「鶴松の真っすぐなところはお光にぴったりです。そして彼は声や身体を使っての表現など歌舞伎役者として大切なことをきちんと真面目に勉強しています。千穐楽まで素敵なお光を演じ続けてくれると期待していますので、ひとりでも多くのお客様にご覧いただきたいと願っています」 役の個性と演じ手の持ち味がシンクロし、若く瑞々しい感性がきらきら零れ落ちる鶴松さんのお光が観られるのは26日までです。
清水まり