世界デフ陸上出場の冨永幸佑選手「100mで入賞、リレーで金を」…スタートダッシュ武器に挑む
聴覚に障害を持つ選手たちが競う世界デフ陸上競技選手権大会は7月18日、台湾で開幕し、熊本学園大3年の冨永幸佑選手(20)が男子100メートルと400メートルリレーに出場する。100メートルで10秒99の自己ベスト記録を持つ若きスプリンターは「100メートルで入賞、リレーで金メダルを取りたい」と意気込む。 【イメージ】スタートランプ
バツッ、バツッ――。練習する競技場に響くのは、冨永選手の武器であるスタートダッシュの大きな足音だ。生まれつき耳が不自由だが、力強く素早い足さばきに、高橋恭平監督(社会福祉学部准教授)は「センスがいい」と目を細める。
スタミナが足りず、後半に失速することがある。その課題と一緒に向き合うのが、高橋監督だ。100メートルで10秒65の自己ベストを持ち、専門の400メートルでは日本学生対校選手権(日本インカレ)で入賞した。現役時代に培ったリラックスしてスピードに乗る技術を伝授している。
日本デフ陸上競技協会によると、デフ陸上の大会では、スターターのピストルの音が聞こえない選手のために、光で合図する「スタートランプ」と呼ばれる装置がスタートライン付近に置かれる。「位置について」「用意」「スタート」の各段階を赤や緑色などの光で知らせる。
冨永選手が飛躍した背景には、スタートランプが設置されない健常者とのレースにも挑む「向上心」がある。出遅れることもあるが、自己ベストは、健常者とのレースでマークしており、伸びしろは十分だ。
来年11月には東京で国際大会「デフリンピック」が開催される。「世界デフで結果を残し、来年につなげたい」と語る。(丸山一樹)