「いなり寿司万引」で“誤認逮捕”4日も勾留された74歳女性… 精神的苦痛などの“賠償額”はいくら請求できる?
日本の刑事司法制度が抱える「人質司法」の問題
しかし、精神的苦痛に見合った金銭的な手当てを十分に受けるのに、国家賠償請求を提起しなければならないというのは、そもそも制度としておかしいのではないか。 荒川弁護士は背景に「人質司法」の問題があると指摘する。 「日本の刑事司法制度は、身柄拘束が過度に重視されています。本件の場合、無実かどうか以前に、そもそも300円のいなり寿司を窃取した容疑で4日間も勾留すること自体がおかしいのです。 女性が一貫して否認し続けたことが不利にはたらいてしまったということのようですが、裏返せば、自白すればすぐに自由の身になれた可能性が高いということです。 もし気の弱い人だったら、たとえやってなくても、自白してしまう可能性があります。冤罪を生むリスクがあります。 本件では、この人質司法の凶暴性・暴力性が改めて浮き彫りになりました。人質司法は克服されていかなければなりません」(荒川香遥弁護士)
無実の罪で拘束されたらどう対処すべきか?
無実の罪で逮捕された場合、どのように対処すればよいか。荒川弁護士は「当番弁護士」の制度を利用すべきだという。 「当番弁護士の制度は、逮捕された人が1回、無料で弁護⼠を呼んで相談できるというものです。警察官に一言、『当番弁護⼠を呼んでください』と言うだけでいいです。 繰り返しますが、費用は無料です。自分がおかれた状況をきちんと伝えれば、その後のことについて的確なアドバイスをしてもらえるし、心理的な負担も軽くなるはずです。 身に覚えのない罪を自白してしまうことだけは絶対にしてはなりません」(荒川香遥弁護士) 無実の罪で逮捕勾留されることは決して他人事ではない。「明日は我が身」ということもある。現在の日本の刑事司法制度が深刻な問題を抱えていることを理解するとともに、自分がいざその立場に陥ってしまった場合の対処法について知っておくことは、きわめて大切なことといえる。
弁護士JP編集部