【菊花賞予想】臨戦過程が明暗を分ける!? AIも偏り出ている「前走距離」に注目したか
【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】 netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。 (文・構成=伊吹雅也) 【写真】ショウナンラプンタのこれまでの軌跡 ◆上位人気馬の好走率が極端に高いわけではない点に注意 AIマスターM(以下、M) 先週は秋華賞が行われ、単勝オッズ2.3倍(1番人気)のチェルヴィニアが優勝を果たしました。 伊吹 強かったですね。五分のスタートを決めて流れに乗り、道中は中団馬群の中を追走。セキトバイースト(13着)が後続を引き離して逃げる展開となりましたが、無理にポジションを押し上げることなく中団のまま4コーナーを通過しています。ゴール前の直線に入ると馬群がバラけて、自然とあいた進路を通り先行勢を急追。残り100mほどの地点で早くも先頭に立ち、外から追い込んできたボンドガール(2着)、内からしぶとく伸びたステレンボッシュ(3着)らに対してセーフティリードを保ったまま入線しました。改めて映像を観返してみても、「チェルヴィニアが伸びてきたな」と認識してから先頭に立つまでの時間は本当にあっという間。ゴール前の直線が短い京都芝2000m内でこれだけのパフォーマンスを見せたわけですから、今回のレースにおいては地力が一枚上だったということでしょう。たとえ少々異なる展開だったとしても、他馬がこの馬を封じるのは難しかったかもしれませんね。 M チェルヴィニアは前走のオークスに続く自身2度目のGI制覇。3走前の桜花賞では13着に敗れてしまったものの、そこから鮮やかに巻き返して3歳牝馬二冠を達成しました。 伊吹 桜花賞の時は先行集団のすぐ後ろを追走する積極策。結果的に中団から後方でレースを進めた馬が上位を占める展開になってしまいましたし、大外枠の影響もあったと思いますから、大きく崩れてしまったのは仕方ないと思います。母チェッキーノは現役時代にオークスで2着となっており、半兄ノッキングポイントも昨年の日本ダービーで勝ち馬と0.2秒差の5着に健闘。こうした血統背景もあってデビュー前から注目を集めていましたが、そんな中でこれだけの結果を残したわけですから、陣営も主戦のC.ルメール騎手も本当にお見事です。 M 次走はジャパンCを予定しているとのこと。牡馬相手、かつ古馬相手のレースとなりますが、引き続き注目を集めることになるのではないでしょうか。 伊吹 54kgの負担重量で出走できるわけですから、性差や年齢差はそれほど心配しなくて良いはず。実際、2018年以降のジャパンCでは3歳の牝馬が[1-2-1-1](3着内率80.0%)と優秀な成績を収めています。コース替わりはプラスに働くでしょうし、今のところ大きな不安要素は見当たりません。メンバー構成やオッズにもよるとはいえ、基本的には高く評価するつもりです。 M 今週の日曜京都メインレースは、クラシック戦線を締めくくる大一番、菊花賞。昨年は単勝オッズ7.3倍(4番人気)のドゥレッツァが優勝を果たしました。ちなみに、その2023年は単勝オッズ4.7倍(2番人気)のタスティエーラが2着に、単勝オッズ2.7倍(1番人気)のソールオリエンスが3着に食い込んで、3連単の配当は1万2380円どまり。今年も堅めの決着をイメージしておいた方が良いのでしょうか。 伊吹 2017年に3連単55万9700円の高額配当が飛び出しているものの、その後の過去6年における3連単の配当は、平均値が4万2465円、中央値が2万6760円。どちらかと言えば堅く収まりがちなレースと言えます。 M 単勝人気順別成績を見る限りだと、人気薄で上位に食い込んだ馬も決して少なくはないのですが……。 伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4番人気以内の馬は2014年以降[8-6-4-22](3着内率45.0%)、単勝5番人気から単勝10番人気の馬は2014年以降[2-4-5-49](3着内率18.3%)、単勝11番人気以下の馬は2014年以降[0-0-1-78](3着内率1.3%)となっていました。単勝二桁人気クラスの馬はあまり馬券に絡んでいないものの、上位人気馬の好走率が極端に高いわけではありませんから、可能であれば中位人気あたりの馬に注目して好配当を狙っていくべきでしょう。 M そんな菊花賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ショウナンラプンタです。 伊吹 単勝二桁人気になるかならないかくらいの、ちょうど良いところを狙ってきましたね。もし来たら魅力ある配当になりそう。 M ショウナンラプンタはキャリア7戦。2走前の日本ダービーでは15着に敗れてしまったものの、3走前の青葉賞で2着に、前走の神戸新聞杯で3着に健闘しています。積極的に狙おうと考えている方は多くないかもしれませんが、十分にチャンスはあると見て良いのではないでしょうか。 伊吹 あとはコース替わりがプラスに働くかどうか――といったところ。少なくともAiエスケープは、プラスに働く可能性が高いと見たようですね。この見解を踏まえたうえで、私は好走馬の傾向とこの馬のプロフィールを比較していきたいと思います。 M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりでしょうか? 伊吹 臨戦過程が明暗を分けそう。2020年以降の3着以内馬12頭中11頭は、前走の距離が2200mでした。 M これはなかなか興味深い傾向。ここまで偏っているとは……。 伊吹 セントライト記念が中山芝2200m外で、2020年から2022年の神戸新聞杯が中京芝2200mで施行された影響もあるとはいえ、2200mの条件戦をステップに臨んだ馬の好走例も少なくありません。近年の菊花賞においては、このくらいの距離が前哨戦として最適なのだと思います。 M ショウナンラプンタの前走は、今年も中京芝2200mで施行された神戸新聞杯。この点は強調材料と見て良さそうです。 伊吹 あとは直近の競走成績も素直に評価したいところ。同じく2020年以降の3着以内馬12頭中11頭は、前走の着順が3着以内でした。 M 大敗直後の馬は過信禁物、と。 伊吹 前走の着順が4着以下だったにもかかわらず馬券に絡んだのは、2021年1着のタイトルホルダーのみ。前走好走馬が強いレースと言って良いでしょう。 M 先程も触れた通り、ショウナンラプンタは前走の神戸新聞杯で3着を確保。こちらの条件も問題なくクリアしています。 伊吹 さらに、同じく2020年以降の菊花賞は、サンデーサイレンス系種牡馬の産駒がやや不振。父にサンデーサイレンス系種牡馬を持つ馬は2020年以降[2-0-3-39](3着内率11.4%)と安定感を欠いていました。なお、3着以内となった5頭は、いずれも1800m超のGI・GIIを制した経験があった馬です。 M 明らかに実績上位と言えるくらいの馬でない限り、サンデーサイレンス系種牡馬の産駒は強調できませんね。 伊吹 おっしゃる通り。今年の該当馬も疑ってかかるべきでしょう。 M ショウナンラプンタの父はサンデーサイレンス系に属するキズナですし、1800m超のGI・GIIにおける最高着順は現在のところ2着。残念ながら、こちらの条件には引っ掛かっています。 伊吹 ただ、青葉賞で勝ったシュガークンとアタマ差の2着に健闘した実績があるわけですから、この傾向だけを根拠に嫌うべきかどうかは微妙なところ。私自身「できれば買い目に加えておきたい一頭だな」と考えていました。人気薄が予想されるうえ、他ならぬAiエスケープが有力と見ているわけですから、少なくとも押さえておくに越したことはないはず。実際のオッズなどもチェックしたうえで、買い目上の位置付けをもう一度検討してみるつもりです。