ロシア軍の新作車両「子亀バイク」が爆誕 目はよく見えず足も遅い
偽装の選び方もしくじり、逆に目立ってしまっていた
それから100年後、車両不足が深刻化しているロシア軍は窮余の一策として、そのアイデアを復活させた。ロシア軍が考えたのはこういうものだ。バイクに乗った歩兵が、ウクライナ軍の陣地にウクライナ側が反応するよりも早く接近する。携行する小火器で攻撃できるあたりにたどり着いたら下車し、徒歩で戦闘に入る──。 だが現実には、そのオートバイはウクライナ側の監視ドローンに気づかれないほど小さくもなければ、自爆ドローンの攻撃をかわせるほど速くもない。5月上旬、ロシア軍のオートバイ部隊がウクライナの第79独立空中強襲旅団が保持する陣地を攻撃した際にも、「こてんぱんにやられた」(同旅団)と報告されている。 オートバイを用いた最初期の攻撃だったとみられるこの攻撃からほどなくして、ロシア軍のオートバイ部隊の一部は、亀戦車に倣ったのか、オートバイにドローン対策の金属製の囲いや網を取り付けるようになった。 問題はもちろん、1000馬力のエンジンを搭載する40tほどの戦車の場合と違って、100馬力もない100kg前後のダートバイクはたいした装甲を付けられないことだ。これは戦間期、デンマーク軍がフアスークスパンサー3(F.P.3)という試作装甲オートバイで学んだことだった。試験では「車両が相当重いため操縦が難しく、クロスカントリーの機動性も非常に低かった」(オンライン百科事典の「タンク・エンサイクロペディア」)と言われる。 ロシア軍はオートバイのケージ装甲に偽装の覆いを被せることで、機動力だけでなく視界も悪化させるという二重のミスを犯してしまったようだ。 おまけに、今回ドローンに仕留められた子亀バイクは偽装のチョイスも悪かった。英国の帝国戦争博物館の解説によると、伝統的に優れた迷彩や偽装とは「対象物の輪郭や形状を見分けにくくする不規則な色彩柄」とされる。 ところが、このオートバイの偽装は単色だった。その結果、ケージ装甲の四角い形がむしろ強調されてしまい、周囲に溶け込むどころかそのなかで目立ってしまっていた。 アパチのドローン操縦士たちはおやおやと思ったことだろう。彼らはソーシャルメディアで「われわれの正面に最初の2輪小屋が現れました」と報告し、爆発の絵文字で戦果を伝えている。
David Axe