群馬クレインサンダーズの水野宏太HCが語る『これまで』と『これから』(後編)「自分たちが見たい景色を見にいくシーズン」
「どれだけ自分たちの戦いができるかに尽きます」
9連勝と波に乗り、直近のA東京戦は2点差での敗戦と、チーム力の高さを証明している。それでも置かれている状況は決して簡単なものではない。チャンピオンシップ進出のワイルドカード下位につけている島根スサノオマジックを1ゲーム差で追いかけ、下には2ゲーム差以内に4チームがひしめいている。水野ヘッドコーチはこの混戦から抜け出すためのポイントを次のように話した。 「どれだけ自分たちの戦いができるかに尽きます。まだまだ浮き沈みがあるチームなので、それをどれだけ無くしていけるか。さらに爆発力を長い時間出せるか、良いディフェンスからオフェンスができるか、良くない流れをいかに早く断ち切れるのか。そういうことが少しずつできている感触がある中で、上位チームとの対戦も自分たちのバスケをすることで、このレースを勝ち取っていきたいです」 群馬はA東京と3試合、宇都宮ブレックスとは1試合、千葉ジェッツとは2試合、秋田ノーザンハピネッツとは3試合と、同地区の上位チームとの対戦を多く残している。簡単なことではないが、上位との対戦を勝ち越すことができれば、それだけチャンピオンシップ進出の可能性も高まるため、この状況をプラスにとらえている。 「この後の結果次第では、大きく波に乗れると思います。そういった意味でもバイウィーク直前に千葉ジェッツに勝てたのは大きかったです。自分たちの進んでいる方向が良いと思えましたし、いろいろなものが見えてきました。具体的には1つのミスでチャレンジすることをやめることがなくなりました。より良いチームになるために、こういうこともやりたい、こういう修正をしたい、ここを伸ばしたいと、前のめりにアクティブに挑戦するようになっているので、良くなっていると感じます」
「群馬にこのチームがある意味や意義を作り出していけるのではないか」
A東京に2点差で敗れ、10連勝とはならなかったが、水野ヘッドコーチは「連勝はどこかで途切れるものです。その時に次の一手として自分たちがどういうアプローチができるか、どういうマインドセットでいれるかというのがすごく大事」と言い、あらゆるシチュエーションを常に考えている。「これは負ける準備をするという意味ではありません。1つでも多く勝つために自分たちのできることを模索する必要があると思っています。バスケットに限らず、自分たちの思い通りにならないことも起こってきます。その瞬間に自分たちがどういられるのかが大事です」 この考えこそ、水野ヘッドコーチが就任時から話している「群馬にバスケット文化を根付かせる」ということの1つなのではないかと感じた。うまくいっている時だけなく、うまくいってない時にこそ真価が問われる。勝つだけではなく、様々な経験をチームとファンが共有していくことが強豪チームになっていくためのステップとなる。彼は言う。 「群馬にこのチームがある意味や意義を作り出していけるのではないかと思っています。僕たちがただバスケットをやって勝っていけばできるものではなく、チームとしてやるべきことをやり続けていくというのを体現することで、ファンの皆さんの気持ちに伝わるものがあればいいと思います。毎試合指定席が完売して立ち見まで出るような状況は、自分たちに向けられている期待の大きさを感じます。ファンの皆さんにはゲームの雰囲気を作ってもらい、支えてもらっています。皆さんに求められている姿でいることは、自分たちにとって大きな意味を持っています」 「これからクラブの歴史を作っていく過渡期だと思っていますので、勝ち負けを含めていろんなことを共有していって、共に戦う経験を積み重ねていくのが理想的だなと感じています。自分たちが見たい景色を見にいくシーズンにしたいので、共に戦って欲しいです」 初のチャンピオンシップ進出をかけて戦うレギュラーシーズンは残り17試合。しかし、チームが見据えているのは、その先の頂きだ。本拠地移転から3シーズン目、まだまだこれから歴史を作っていくチームではあるが、後半戦の勢いを考えると一番の台風の目になると言えるだろう。最終盤戦、頂点を目指す群馬の奮闘に期待したい。
ズッボン