【韓国とんかつ】衣ザクザク、肉が薄くてソースどっぷり。韓国風のとんかつ:パリッコ『今週のハマりメシ』第139回
おぉ~! まずもって、巨大な皿にどーんとのったかつのインパクトがすごい。ほぼ本体は見えず、赤茶色いソースが全体をどっぷりと覆っている。それにサラダ、白メシに加え、さっきのとはまた別に玉子スープがついてくるのがちょっとおもしろい。 肝心のかつだが、僕の慣れ親しんだとんかつと比べてずいぶん薄い。試しに数枚のかつを縦にして断面を見てみると、衣、肉、衣、それぞれが同じくらいの厚みだ。ビアホールや酒場のつまみとして昔からある「紙カツ」というメニューに近いイメージだろうか。ただ、それが縦に2列、ずらーっと大皿に並んでいて、ボリューム的にはかなりすごいと。 ザクッザクッという食感が心地いい衣が駄菓子的ジャンクな香ばしさで、もはや主役級の存在感を発揮している。そこに、薄くのばされたとはいえ、きっちりと豚肉の旨味も加わる。はっきり言って、嫌いなわけがない料理だ。 さらに特筆すべきはソースで、デミグラスソースにケチャップを加えて甘くしたような、どこかわんぱくな味わい。和風とんかつソースと言われれば違和感があるけれど、じゃあ老舗のとんかつ屋でオリジナルに調合しているソースなんだよ言われたら、「あそこは独特のソースがうまいんだよな!」と絶賛してしまわない自信はない。 当然白メシとの交互食べも合うが、究極は米をとんかつの皿にのせてしまい、カレーのようにスプーンで食べる方式だろうか。とんかつとごはんとソース、すべてを余さず味わえるし、いわゆるとんかつ定食とは別ものの食体験として楽しい。 肉が薄めで、ライスも超大盛りというわけではなかったから、余裕で食べられるだろうと思っていたが、食べ終えるころには満腹をだいぶ超える状態となった。よく考えたら、あんなにでっかいかつに加え、サイドメニューもたらふく食べてるんだから当たり前か。とにかく、ふだんなかなか食べられない美味をお腹いっぱい食べられたという満足感が幸せな一食だった。 家に帰ってから調べてみたところ、韓国でとんかつは、日本の呼び名そのままで通じるほど定番のメニュー(正確には、韓国語には「ツ」という発音がないため「トンカス」)らしく、その特徴はまさに、肉が薄く、デミグラス系のソースたたっぷりかかっていることなんだそう。ということは、日本で独自の進化を遂げたカレーライスやラーメンの、韓国版と言える料理というわけか。 韓国に限らず、各国独自の名物や有名な料理は多い。けれども日本の町中華のように、全世界において、各地から伝わって独自進化を遂げ、庶民の間で定着した料理があるとするならば、できるだけ味わってみたいものだ。 ソジュハンザン029、数人で行ってあれこれ頼んでみるのも楽しそうな店だった。 取材・文・撮影/パリッコ
【関連記事】
- 【餃子&ナスバターチャーハン】コンビニの冷凍揚げなすとチャーハンで町中華の名店メニューをお手軽再現!:パリッコ『今週のハマりメシ』第138回
- 【肉&春菊天そば】このご時世に気概しか感じない、立ち食いそば界希望の新店「とらや」:パリッコ『今週のハマりメシ』第137回
- 【カオマンガイ&ナスガーリックスパイシー&ライス】東中野のエスニックな立ち飲み屋で出会った、絶品なすメニュー:パリッコ『今週のハマりメシ』第136回
- 【いかあたま定食】それってなに? と思って食べてみたら、急に好物の上位に食い込んでしまった初耳の定食:パリッコ『今週のハマりメシ』第135回
- 【つけうどん】そろそろ食べられなくなってしまう、思い出たっぷりの屋上うどん:パリッコ『今週のハマりメシ』第134回