【毎日書評】AI時代に「経理」として生き残る人が持っているスキルとは?
新しい経理の役割
帳簿への記録は、経理部なら必ず行う重要な仕事。「帳簿に記録」の「簿」と「記」の字をとって「簿記」と表現するところからも、その重要性が推し量れます。 取引が発生したら、仕訳帳と総勘定元帳に記録をしますね。 現役経理の方には「今さら」のお話ですが念のため、簿記の取引は、一般の取引と少し異なり、資産・負債・純資産・収益・費用の5項目が増えたり、減ったりすることを取引といいます。 そのため、事務所を貸したり駐車場を借りる契約を結ぶだけ、商品を注文しただけでは、簿記上の取引にはなりません。収益や費用が発生していませんし、資産、負債などの増減もないからです。 一方、泥棒が入ったり、火災が起きても、一般には取引とはいいませんが、簿記上は取引になります。なぜなら、ガラスが割られ、ドアノブが壊されたら、修繕費という費用が増加します。事務所が火事になると建物や備品が消失し、資産が減少するからです。(24~25ページより) これらが増減したとき帳簿に記録するのは、企業を取り巻く利害関係者の方々に、「うちの会社は、こういう状況ですよ」と報告する必要があるから。 そのためには、資産・負債・純資産・収益・費用が、増えたり減ったりする取引をひとつ残らず、帳簿に記録しておかなければならないのです。 いうまでもなくパソコンが普及するまでは、それらすべてを手書きで記録していました。 しかしご存知のとおり、現在は会計ソフトが主流。仕訳さえ入力すれば、総勘定元帳、試算表のみならず、現金出納帳や受取手形記入帳、商品有高帳など、10種類以上ある補助簿も自動で作成されるのです。ソフトによってはキャッシュ・フロー計算書まで自動で作成されるので、膨大な時間短縮になったわけです。 ただし時間が短縮された一方で、「それぞれの意味がわからない」「中身がわからない」「人に伝えられない」経理担当者が増えたのも事実であるようです。 仕訳さえ入力すれば、記録、集計は会計ソフトがすべてやってくれるのです。 記録、集計しかできない社員は要らなくなります。 それでは、すべての経理社員は要らなくなるのか? そんなことはありません。 あらゆる帳簿から導き出された数字をもって、経営者に進言できる人は必要とされます。(27ページより) 今後も、AIの進化に伴って、記録、集計する仕事が奪われていくことになるでしょう。しかし、営業にも企画にも人事にもできないこと、すなわち「数字を通して会社全体の状況を知ること」ができるのは経理だけでもあります。 このまま景気の波に乗って営業を仕掛けるか、会社の危機なので資金繰りに走るか、設備投資に回すか、それらのことにいち早く気づいて戦略を練り、経営陣に進言できるのは経理担当者だけだということ。 したがって、今後は「戦略を経営者と語り合える経理担当者」が必要になるはずだと著者は述べているのです。(24ページより) 民間企業の経理担当、税理士、講師という3つの視点から、経理職についてわかりやすく解説した一冊。経理に携わっている方には、きっと役立ってくれるはずです。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 明日香出版社
印南敦史