「最も健康」「最も信頼できるブリーダーから」は真っ赤な嘘だった…NYペットショップと「子犬工場」のあぶない実態
米スバルの理念
ASPCAニューヨーク本部では、シェルターの他に動物病院まで併設されており、保護犬の治療だけではなく、スタッフが散歩をして人に慣れさせるなど、手厚い保護を受けている。しかし、そのASPCAの最大の支援企業が、日本の自動車メーカーのスバルであることは日本ではほとんど知られていない。 アメリカのスバルが掲げる社会貢献の理念の1つに「スバル・ラブズ・ペット(SUBARU LOVES PETS)」がある。アメリカのスバルは、これまでに3000万ドル(約45億円)以上、ASPCAに寄付をしており、特別な支援を必要とするペット(足や目が不自由なペットなど)への支援を含め、全米で25万匹以上のペットの生活に影響を与えてきた。 しかも、パートナー関係にあるシェルターを持つ動物愛護団体とASPCAの協力を通じ、アメリカ各地にある600を超えるスバルのディーラー(自動車販売店)で、保護犬譲渡会を開き、保護犬の養子縁組をさせている。アメリカのスバルは、これまでプログラムで合計15万7000 匹以上の保護犬の養子縁組をした実績を持つ。 昨年の2023年だけでも、スバルと動物保護団体によりアメリカで5万2000匹の保護犬の養子縁組が成立。アメリカのスバルの支援により、1年間でシェルターに入っていた5万匹を超える保護犬たちが、アメリカ人の自宅で飼われるようになったということだ。 また、アメリカのスバルは、保護犬の養子縁組が成立するたび、参加ディーラーが100ドル(約1万5000円)をASPCAなど動物保護団体に寄付。毎年10月に開催している「スバル・ラブ・ペット月間」では全米のスバルディーラーが犬の養子縁組などの支援を行う。 11月の「シェア・ザ・ラブ」イベントでは、約3ヶ月の間にスバル車を購入またはリースした場合、1台につき250ドル(約3万8000円)をその顧客がASPCA含む4つの慈善団体から寄付する団体を選び、アメリカのスバルが代わりに寄付。ASPCAには今年180万ドル(約2億8000万円)を寄付した。アメリカのスバルは「スバルは企業として、世界にプラスの影響を与える役割を果たすことが重要であると信じています。それは正しいことだからです」と声明を出した。 3月にニューヨークで開催されたニューヨークの自動車ショーでも、スバルは自社の自動車の展示スペースに、保護犬の里親募集のケージを設け、実際に保護犬の譲渡会を開いていた。アメリカでスバルは、犬を起用したテレビCMを10年以上流しており「スバル=ペット」というイメージもあるが、自動車ショーでは「スバル・ラブズ・ペット(SUBARU LOVES PETS)」の社会貢献を今年もPRしていた。 アメリカのスバルは「スバル・ラブ・プロミス」という指針において「環境」「健康」「教育」「ペット」「地域社会」という5つの理念を掲げ、イベントを通じてアメリカでの自分たちや、スバルの自動車オーナーが最も大切にしている地域に変化をもたらすことを目指している。保護犬の養子縁組やASPCAへの支援はその1つにすぎない。 日本ではSUBARU LOVES PETSのような活動をスバルは行っていない。そこで、日米の寄付控除の違いなのかどうかを含め「なぜ日本では行われないのか?」という質問を日本のスバルにしてみた。 日本のスバル広報部からの回答は「なかなか難しい質問です」という枕詞のあと、以下の通りだった。 「企業の社会貢献活動の状況および取り巻く環境については、日本と米国でかなりの相違があります。両国が持つ歴史・社会・文化的背景が関係しており、それ故に、活動に対する社会全体の理解・受容性にも相違があると認識しています」 明言こそしていないが、スバルがSUBARU LOVES PETSを日本で行う予定もないことがわかる。日本ではパピーミルとペットショップの関係が周知されておらず、保護犬に関してもまだまだ日本での関心が低いということなのかもしれない。
笹野 大輔(ジャーナリスト)