人類にとって筋肉は何を意味するか?【筋肉博士・石井直方のVIVA筋肉!】
脳が先か? 筋肉が先か?
このように体の中で重要なポストを担うようになった筋肉ですが、では脳と筋肉は、どちらが先に地球上に現れたのでしょうか? あるいは、どちらが先に高度な進化をはじめたのでしょうか? おそらく、これは「同時」という答えが正しいと思います。 というのも、イソギンチャクのような生物であっても、筋肉のような器官だけでなく原始的な神経系を持っています。つまり、あらゆる生物の筋肉は単体で動くのではなく、神経系の指令を受けて動いているわけです。 ということは、神経系だけ、あるいは神経系の中枢である脳だけが存在していても意味はありません。指令を出す側と、指令を受ける側、それが同時に存在することが必要であり、それによって初めて目的にかなったアクションが可能になるのです。 一般的に「脳は支配者層、筋肉は労働者層」というイメージがあるかもしれません。しかし、原始的な生物しかいなかった時代から、両者は協力し合いながら母体を進化させてきた「同志」と言えるのです。 ※本記事は2017年に公開されたコラムを再編集したものです。
石井直方(いしい・なおかた) 1955年、東京都出身。東京大学名誉教授。理学博士。専門は身体運動科学、筋生理学、トレーニング科学。ボディビルダーとしてミスター日本優勝(2度)、ミスターアジア優勝、世界選手権3位の実績を持ち、研究者としても数多くの書籍やテレビ出演で知られる「筋肉博士」。トレーニングの方法論はもちろん、健康、アンチエイジング、スポーツなどの分野でも、わかりやすい解説で長年にわたり活躍。『スロトレ』(高橋書店)、『筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など、世間をにぎわせた著作は多数。