中村歌昇が語る!秀山祭、吉右衛門への思い<令和を駆ける“かぶき者”たち>
──初日を迎えて 9月8日に電話にて取材 今回の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』では、幕が開いてからどんな心境で舞台に立っていらっしゃいますか? 歌昇:今回は台本が大きく変わっているところも多いので、前回はこうだったと思い出しつつも、みんなで新しいものを生み出していくような感覚で毎日取り組んでいます。この作品に登場するキャラクターはみんな方向性が違っていて、主人公の空海は天才肌で真実を知りたいという興味が原動力となっていますし、今回(中村)吉之丞さんが演じている橘逸勢(たちばなのはやなり)はそれに付き添う存在で、二人はシャーロックホームズとワトソンみたいなバディ関係だと思います。では白楽天がどういうキャラクターなのかと考えた時に、純粋な詩人として表現するべきで、 楊貴妃を知りたい、会いたいという気持ちが全面的に出ていた方がいいと思いました。ですから楊貴妃に対しての気持ちを今回は強く出そうと思っています。型がないものですから、その時その時の流れで自分もリアクションしないと成立しないところもありますので、それを楽しみながら演じていこうと思います。 ──今年の秀山祭にかける思いを教えてください。 歌昇:秀山祭は、初代中村吉右衛門の偉業を後世に残そうと始まったものです。これからは播磨屋の一員として初代と二代目という偉大な名優たちについて後世に語り継いでいくという使命があると思います。まだまだそのような大きなことを言える立場ではないですが、この秀山祭ができる限り続いてほしいという思いとともに、多くの学びをくださったおじ様への恩返しになるように少しでもその力になりたいです。 中村歌昇(NAKAMURA KASHO) 東京都生まれ。父は三代目中村又五郎。94年6月歌舞伎座〈四代目中村時蔵三十三回忌追善〉の『道行旅路の嫁入』の旅の若者で四代目中村種太郎を名乗り初舞台。2011年9月新橋演舞場『舌出三番叟』の千歳ほかで四代目中村歌昇を襲名。