【連載】言の葉クローバー/中畑大樹がステージ前に意識している『天空の城ラピュタ』のセリフ
心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。今回はsyrup16gなどの自身が所属するバンド以外にも、さまざまなプロジェクトでドラムを叩いている中畑大樹が登場。昔から大好きなジブリ作品から、ステージで意識しているというセリフについて語ってくれました。
----------------------------------- 落ち着いてやりゃあ、できる!! 映画『天空の城ラピュタ』 -----------------------------------
自分らしいドラムを叩くために大事にしてる言葉
『天空の城ラピュタ』を初めて観たのは小学校6年の時。地元の映画館に、のちの団さんず。のギタリストになるオダギリくんと観に行きましたね。 選んだのは、パズーが働いている炭鉱の親方のセリフです。映画の冒頭で、飛行船から逃げて空から落ちてくるシータをパズーが見かけて助けるんですよ。そのことを親方のところへ報告しに行くと、親方はボロのエンジンの修理で手いっぱいで。だけど下にいる炭鉱夫を上にあげないといけないから、エレベーターの操作をパズーに初めて託すんです。「お前やれ」って。その時に不安そうなパズーを見て言ったのが、このセリフなんです。 いろんなバンドでドラムを叩かせてもらうようになって、やっぱり準備期間が短い現場もあったりするんですよ。例えば、去年の20th Centuryのツアーで2ヵ所だけ俺とキタダさんがサポートで呼ばれて。20曲覚えるんですけど、いろんな事情があって準備期間がすごくタイトで。バンマスをやってた江沼郁弥くんに1日だけ時間もらって20曲を一緒にあわせてもらったりもして。当日までにやれることはすべてやったけど、やっぱり不安なんですよ。そこでなんと言ったか……落ち着いてやりゃあ、できる!! 実際、そう言い聞かせるようにしてステージ出て、3、4曲やると、なんとかできそうだと思えて、ちょっと楽しくなって。江沼くんのほうを見たら、楽しいでしょ?みたいな感じで僕を見てるんですよ。で、キタダさんのほうをパッと見たら、ずっとiPadの譜面を凝視してました(笑)。 緊張したほうがいいパフォーマンスする人もたぶんいると思うんです。でも俺は緊張してうまくいった試しがない。ガチガチでなんかギクシャクしたままライヴ終わっちゃう、みたいなことも昔はあって。できる以上のことや、なんかすごいことをやんなきゃいけないんじゃないって、変に自分でプレッシャーをかけて緊張しちゃうんですよね。それでただバタバタして終わり、みたいな。これでよかったのかな?って感じた経験もありました。 だから俺の場合は変に緊張しないほうがいいんだろうなと思って、不安な時は出る前にこの言葉を言って、できるだけ平常心でいられるようにしています。普段どおり落ち着いて、なんならリハくらいの気持ちのほうが動きやすくなる感じもする。その代わり、リハは本番みたいにやりますけど。いつでも自分らしいドラムを叩くために、大事にしてる言葉ですね。 余談ですけど、今回この企画でお話するってことで、久々に見返したんですね。そしたら海賊のドーラが「だてに女を50年やってるんじゃないよ」って言ってて。俺と同い年じゃん!ってびっくりしました。彼女と比べたら、俺なんてまだまだですね。 『天空の城ラピュタ』 監督:宮崎駿 ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』に登場する天空の島〈ラピュタ〉を題材にした傑作ファンタジーアドベンチャー。鉱山町で見習い機械工として働く少年パズーと、空から降ってきた不思議な少女シータが〈飛行石〉を狙うさまざまな陰謀に巻き込まれていく――。1986年8月2日公開、スタジオジブリの劇場用アニメーション作品。