『笑うマトリョーシカ』原作者・早見和真氏がドラマ化の際に出した唯一の「リクエスト」
TBSで放映中のヒューマン政治サスペンスドラマ『笑うマトリョーシカ』。同名の原作を手がけた小説家・早見和真さんにインタビュー。ドラマでは、かつて同じ四国・松山の名門高校に通い、青年になり若き政治家、有能な秘書として奇妙な関係で結ばれる清家一郎(櫻井翔)、鈴木俊哉(玉山鉄二)と、それを取り巻く黒い闇に、新聞記者である主人公の道上香苗(水川あさみ)が斬り込んでいく様子を、スリリングに描く。 早見さんの作品は、これまでも多くの作品が映画化されるなど、「映像」との縁は深い。小説家という立場ながら、映像化については「僕は『原作』部のスタッフでしかない」という柔軟なスタンスでドラマ作りの「一役」を担う。そこでインタビュー前編では、自身が影響を受けてきた作品などと共に、原作と映像に対する持論や、ドラマ化に際して「ほぼ唯一出した」という希望を明かしてもらった。 ■原作と映像化は「ある種ライバル」 ――今回、本作がドラマとして映像化されることについて、先生はどのように捉えていらっしゃいますか? 僕はおそらく映像化の多い作家だと思います。以前はそのことにある種のコンプレックスを感じていました。僕が心を揺さぶられてきた小説は、決して映像化できないような物語が多かったので。たとえば最近話題の『百年の孤独』(ガルシア=マルケス著)だって、いまはまだ映像化されていませんよね。そういうことをよく感じていました。 ですが、最近はその考えにも変化があって。僕が小説で伝えようとしていることは、どんな分厚い物語を書いたとしても、おそらく1つか2つだと思っています。その大切な1つか2つのことを、映像側の人たちが外側だけでなく、きちんとくみ取ってくれているのならば、信頼して原作を預けるというスタンスになりました。メッセージを伝える手段がどうであっても構わないという考えです。 ――試写をご覧になっていかがでしたか? 圧倒的に面白かったです。想像していたよりもミステリーっぽい作りになっていて、「来週も観たいな」と思わされました。もし仮に……、本当に万が一初回の視聴率が低かったとしても、僕は次週から上げていけるのではないかと思いました。口コミの力を信じられるというか。連続ドラマの良さが凝縮された第1回だったと思います。