一ノ瀬ワタル、“フィジカル俳優”として発揮する武器 『おむすび』に新たな風を吹き込む
『キングダム』などにみる“元格闘家”の経歴を活かした強靭なフィジカル
映画やドラマはフィクションであり、そこに登場するキャラクターを表現する、優れた俳優の存在がなければ成立はしない。そんな当たり前だが忘れてしまいがちなことを再認識させてくれるパフォーマンスだといえるものだっただろう。 そんな彼の最大の魅力は、やはり強靭なフィジカルだ。一ノ瀬は元格闘家ということもあり、身体を扱うことに非常に長けている。アクション映画『キングダム』(2019年)はもちろんのこと、『ヴィレッジ』(2023年)や『インフォーマ』(2023年/カンテレ)といったシリアスなエンターテインメント作品でも彼のフィジカルは活かされ、物語にダイナミズムを与えてきた。ひとつの作品の中で重厚さと軽快さという相反するものを一度に体現してみせる俳優は、彼のほかに誰がいるだろうか。 『おむすび』での一ノ瀬は、自身のフィジカルのベクトルを思い切りチャーミングなほうに振っている。本作が再び獲得した陽気さと軽やかさの大部分は、彼が担っているといえるのではないだろうか。一ノ瀬の存在が加わったことで、『おむすび』の物語はトーンを変えて加速しているのだ。『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(ABEMA)もはじまったところなので、俳優・一ノ瀬ワタルを堪能できる素晴らしい季節になりそうである。
折田侑駿