人間国宝の茂山七五三さんが伊勢参りテーマの狂言…23日に名古屋で公演「お豆腐の和らい」
親しみやすい狂言で知られる京都の茂山千五郎家が、狂言会「お豆腐の和(わ)らい」を23日に名古屋市北区の北文化小劇場で開催する。昨年、人間国宝に認定された茂山七五三(しめ)さんの記念公演で、演目には東海地方にゆかりのある伊勢参りがテーマの「素袍落(すおうおとし)」を選んだ。七五三さんは、「お伊勢さんは毎年末にお参りしていて切っても切れない縁がある。精いっぱいの舞台を届けたい」と話している。
千五郎家は、京都で約400年続き、現在の当主で14代目。滑稽な様子を演じる狂言は、伝統芸能の中でも気軽に楽しめるが、千五郎家は、さらに親しみやすい「お豆腐狂言」を家訓にしている。
お豆腐狂言は、元々、明治時代から昭和まで活躍した二世千作(十世千五郎)に対する悪口が元になった。京都ではその日のおかずに困ったら、豆腐が筆頭格になる存在。狂言や能を特権階級の人々が楽しんでいた時代に、どこにでも出かけていた二世千作の姿勢を仲間が「お豆腐のようなやつだ」と言ったという。千作は「お豆腐は味付けによって高級な味にもなり、庶民の味にもなる。よりおいしいお豆腐になることを努力すればいい」と、家訓にするようになった。
名古屋の公演では、素袍落で七五三さんが主役(シテ)の太郎冠者(たろうかじゃ)を勤める。急に伊勢参りを思い立った主人の使いで、太郎冠者が同行を約束していた伯父の家に使いに行く話だ。太郎冠者が酒に酔っていく様子を七五三さんが、柔らかく優しい芸風で演じる。
その他、シテを茂山茂さんが勤める「空腕」、茂山逸平さんが勤める「釣針(つりばり)」を上演する。公演前には作品の見所の解説があり、休憩時間には、役者が物販などをする。公演の宣伝も担当する茂さんは「休憩時間には役者との交流もでき、初心者でも楽しんでもらえる」と呼びかけている。
チケットは一般4000円、生徒学生2000円、小学生以下1000円。問い合わせは茂山狂言会事務局(075・221・8371)。