長澤まさみ、約11年ぶりの月9 際立つキャラと奇想天外な設定は吉と出るか?
低迷が伝えられて久しいフジテレビの月9だが、今季は『コンフィデンスマンJP』(9日スタート)で長澤まさみを主演に据えて勝負に打って出た。長澤の月9主演は、山下智久とのW主演だった2007年放送の『プロポーズ大作戦』以来、約11年ぶり。起死回生なるか。
フジ起死回生なるか? キャラが際立つエンタテインメント
3人の信用詐欺師(コンフィデンスマン)を中心に物語は進行する。長澤演じるヒロインは、正体不明の美しきコンフィデンスウーマン・ダー子だ。真面目で小心者の若きコンフィデンスマン・ボクちゃん(東出昌大)、百戦錬磨のベテランコンフィデンスマン・リチャード(小日向文世)とともに、欲望に満ちあふれた悪徳大富豪たちをターゲットに奇想天外な策を練り、どう大金をだまし取るか。その過程がコメディータッチで描かれる。また、ターゲットとなる人物には、毎回豪華なゲスト俳優が登場する。第1回は江口洋介が、公益財団の会長役を貫禄たっぷりに演じていた。 初回の平均視聴率は9.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)ということで、前作『海月姫』を上回ったが、月9に期待される2ケタ台には届かなかった。まずまずのスタートだが、初回は面白かった。どこまでがウソでどこからが本当なのか、視聴者も思わず詐欺の渦中に巻き込まれた気分になってしまう。また、長澤らのテンポの良い掛け合いが盛りだくさんで、笑いどころも満載だった。
大げさなリアクション、奇想天外さは面白いと見るか? 好みが分かれるところ
長澤ファンには、垂涎ものシーンも多い。毎回、いろいろな業界のさまざまな職業人になりすまし、ターゲットの懐に入り込む。あるときはCA(キャビンアテンダント)、あるときは秘書、またあるときには海外の大物女優……と、長澤の変幻自在な“コスプレ”を十分堪能できる楽しみがある。 ただし、芝居としてはリアクションが大袈裟すぎ、演技が空回りしていると思えてしまうきらいがある。逆にその壊れっぷりの面白さを楽しむのがフィクションならではの妙味というものかもしれないが、その辺りは好き嫌いが分かれるポイントだろう。 東出が演じるボクちゃんの存在もユニークだ。詐欺稼業から足を洗い、まっとうに生きたいと考えているがゆえに、ダー子にいつも丸め込まれてしまう小心者を演じているのだが、これが実にいい味を出している。そして、脇をしっかり固めているベテラン俳優・小日向が演じるリチャードは、だますことは得意だが、あまりにもお人よし過ぎるために、だまされることも多い。同じ詐欺師といえど、あの手この手で相手を巧みにだます手法はそれぞれ個性豊かでもあり、キャラが立っている。 脚本は、古沢良太氏が担当。ドラマ『リーガル・ハイ』シリーズや映画『ALWAYS 三丁目の夕日』などで絶大な人気を持つ作家だけに、期待度は高い。 ただ、やはり好みがはっきり分かれるドラマといえそうだ。詐欺の内容や物語の展開が、ありえないことばかりで、奇想天外に過ぎるところがある。それをドラマならではのエンタテインメントの魅力として肯定的に捉えるか、こんなのありえないよと白けてしまうかで、意見は割れそうだ。 毎回、話が進んでいくうちに面白さのネタ切れになる可能性もある。古沢脚本の底力に期待したいところだ。 次も観たい度 ★★★★★ (文・写真:田村豊)