「ゴミ、カス、消えろ」 プロ野球選手に対する「SNS中傷」、選手会の法的措置進む…ファン自称する投稿者の"正体"
プロ野球選手も「誹謗中傷」に悩まされている。勝敗やプレーに一喜一憂するファンの中には、球場でヤジを飛ばしたり、SNSで誹謗中傷の投稿をする人もいる。 そうした状況の中で、日本プロ野球選手会(會澤翼会長)は、弁護士でつくる誹謗中傷対策チームを立ち上げ、この問題に取り組んできた。 匿名の投稿者を何件も特定して、謝罪や解決金の支払いなど示談が成立しているほか、刑事事件として告訴に至ったケースもある。 誹謗中傷する人の中には、ひいきチームの敗北を腹いせの形でぶつけるファンもいれば、プロ野球以外のさまざま話題に噛み付く人もいたという。 一方で、選手たちが声をあげると「SNSを見るな。プレーに集中しろ」と的外れな指摘も寄せられてくるそうだ。プロ野球選手会の顧問弁護士にこれまでの取り組みと課題を聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)
●リアルタイムの観戦や視聴に伴って誹謗中傷の数も増えていく
これまでもプロ野球選手会の顧問弁護士は、選手から寄せられるさまざまな法的相談に対応してきた。 近年、SNS上の誹謗中傷に関する相談が増えたことから、2023年9月に対策チームを立ち上げて、本格的に着手した。 対策チームのメンバーである高橋駿弁護士は「誹謗中傷の相談が目立つようになる中で、確実に名誉毀損や侮辱にあたる投稿が散見されるようになり、選手会として対応する姿勢を示す必要があると考えました」と話す。 先立って、2023年3月には、日本野球機構(NPB)とともに12球団と共同で誹謗中傷への注意喚起を呼びかけていた。シーズン中はSNSの投稿も盛り上がり、全体で投稿数が増えるに伴って誹謗中傷も増えていく。 「死球を巡って騒ぎになったり、際どい判定があると、全体として話題になり、それに連動するような形で誹謗中傷が増えます」
⚫️家族が攻撃されたら…遠征で家を離れる選手の心にも限界が
中傷の投稿には、「死ね」などのひどい発言も数えきれないほどあるという。開示が認められた投稿の中には「ゴミ」「カス」「消えろ」などの表現があった。 「そのような言葉を見て、傷つかない選手はいません。中傷だけでなく『殺してやる』など殺害予告を受けることもあり、球団と相談して警備員をつけた選手もいるほどです。それだけでなく、選手の親族までがターゲットにされることもあります」 自分のことはともかく、家族が攻撃されることは許せないと考える選手も少なくなく、シーズン中は遠征で自宅を離れることもあり、家族に何かあればと不安に感じるという。 「プレーに集中できなくなり、生活や仕事にも影響が出る極めて重大な行為です」 ところが、このような誹謗中傷の注意を呼びかけると、必ず出てくるのが「じゃあ、SNSを見るな」「プレーに集中しろ」という反応だ。 「プロ野球に限らず、アスリートの誹謗中傷問題で同じ反応が見られます。周囲から『掲示板にこんなことが書かれていたよ』と心配されることもあり、仮にSNSを見なくても、無関係ではいられないのです」