名探偵コナンが挑む最上級の謎解き 永岡智佳監督が明かす3つの“みちしるべ” 土方歳三にまつわる刀とお宝争奪戦
大ヒットアニメの劇場版シリーズ最新作「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」(永岡智佳監督)が、12日に公開される。永岡監督にとってシリーズ3作目のメガホンとなる本作は、コナンのライバル・怪盗キッドらが「新選組副長・土方歳三にまつわる刀」を巡り、お宝争奪バトルミステリーを繰り広げる。監督が見どころや「世界のコナンファンの皆さんに楽しんでいただけたら」と期待感を語った。(奥津 友希乃) 【名探偵コナン100万ドルの五稜星】の相関図 「見た目は子供、頭脳は大人」のキャッチフレーズで知られる、少年コナンが主人公の大人気シリーズ。犯罪組織「黒ずくめの組織」によって、薬で少年化された高校生探偵・工藤新一が“江戸川コナン”と名乗り、数々の事件を解決していく。 劇場版は、1997年から昨年まで26作が公開され、シリーズ興行収入は累計1180億円を突破。毎年4月に公開されることから、“春の風物詩”として幅広い世代に愛されている。 最新作のメガホンを託された永岡監督は、13年に劇場版シリーズの演出として初参加。以降、14~17年の公開作で演出や助監督などを担当した。19年「―紺青の拳」、21年「―緋色の弾丸」では監督を務め、大ヒットに導いた実績の持ち主だが「コナン作品に携わって10年ですが、こんなに長くやらせていただくとは想像もしていませんでした」と語る。 中でも監督作「―紺青の拳」は、コナンの宿敵・怪盗キッドを中心とした物語。本作もキッドを軸に物語が展開することから、原作漫画を手掛ける青山剛昌氏も永岡監督の手腕を高く評価し、白羽の矢が立った。 「先生は『―紺青の拳』のような、現実ではあり得ない派手なエンタメアクションもお好き。今作もコナン映画の三大要素でもある『謎解き』『登場人物の恋模様などのヒューマンストーリー』『アクション』もしっかり全部あり、バランスも大切に製作しました」 本作は北海道・函館市を舞台に、コナンと高校生探偵の服部平次、怪盗キッドが“三つどもえの戦い”を繰り広げる。精密に入り組んだストーリーだけに「軸をちゃんと決めないと混乱しそう」との予感もあった。“みちしるべ”となったのは青山氏からの言葉だ。 「先生からは、『コナンとキッドがなれ合わないように。探偵と怪盗として互いの目的や役割を全うする感じで』と最初にお話を頂いて。その言葉をガイドに、キッドが函館に来た目的とは何か、その先にある真実に軸を置いて描きました」 劇中では五稜郭タワーや“100万ドルの夜景”を望む函館山など、市内の観光名所や街並みを緻密(ちみつ)に描写。過去にプライベートで訪れた五稜郭の桜にインスピレーションを受けた。 「五稜郭の桜の咲き誇り方が本当に素晴らしくて、久々に感動して。桜の描写を映像にも取り入れていますし、個人的に据えていた今作のテーマでもある『コナンと平次が春の嵐に巻き込まれる』というイメージにもつながりました」 見どころの1つ目として「〈1〉怪盗キッドのついに明かされる真実」を挙げる。純白のシルクハットとマント姿でキザな振る舞いでも人気のキャラだ。 「キッドは思い入れの深いキャラクターですし、(初監督作)『―紺青の拳』の続きを描くという解釈でもあります。キザなせりふを恥ずかしげもなく言えるのが一番の魅力。お辞儀の仕方や座り方も優雅。その様式美は大事に描きました。今作はそんなキッドの“真実”を巡る物語でもある。目まぐるしい展開でも、お客さんにはそのことも忘れないでいただけるように演出も工夫を凝らしています」 次に挙げたのが「〈2〉平次と幼なじみの和葉の“ムズキュン”な恋の行方」だ。 「青山先生からもオーダーがありましたが、大事にしたのは『もどかしさ』です。本当にこの二人の関係ってじれったくてムズムズしますよね。平次はどんどん表情がかっこよくなりますし、その感情の導線とともに、2人の恋の行方がどうなるのか…。注目してほしいです」 最大の魅力が、シリーズでも最上級の難易度とも言える「〈3〉刀や宝を巡る謎解き」だ。 「謎解きの要素がこんなに入っている作品ってあまりないのかなと。みんなで協力して解いていく展開も魅力のひとつ。脱出ゲームが好きな人は好みの作品かもしれません。老若男女に分かりやすいように図式などのアニメーションはこだわって試行錯誤しました。ミステリーやコナンシリーズを好きになる入り口になってくれたらうれしいです」 昨年4月公開の前作「―黒鉄の魚影」は、シリーズ歴代最高興収138・8億円を記録。本作でも最高興収更新が期待される。 「重圧がないと言えばうそになりますが、皆さんの期待に応えられるように頑張らなきゃという一心でした。四半世紀以上つながれてきた映画シリーズのバトンを受け取り、次につながる作品になったと思います。結果として、世界のコナンファンの皆さんに楽しんでいただければうれしいです」 ◆永岡 智佳(ながおか・ちか)1983年、群馬県生まれ。2012年、TOKYO MX「黄昏乙女×アムネジア」で演出家デビュー。劇場版「コナン」シリーズでは、13年「名探偵コナン 絶海の探偵」で初演出を担当。19年「名探偵コナン 紺青の拳」で初監督を務めた。主な監督作は、21年「名探偵コナン 緋色の弾丸」、22年「劇場版 うたの☆プリンスさまっ[おんぷ] マジLOVEスターリッシュツアーズ」など。 ◆「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」 函館のとある財閥の収蔵庫に、怪盗キッドから「土方歳三にまつわる日本刀を狙う」と予告状が届く。犯行予告当日、コナンと西の名探偵・服部平次は、キッドが狙う刀に関連する宝が、函館のどこかに眠っていることを知る―。111分。 〇…コナン映画シリーズは、タレントがゲスト声優を務めるキャラも登場する。本作では北海道出身の俳優・大泉洋(51)が、道警捜査一課の“ドジな刑事”川添善久役を担当。自ら北海道弁を用いた「「わやだ!(=むちゃくちゃだ!)」などのせりふを提案し、郷土愛たっぷりに声を吹き込んだ。永岡監督は「(当て書きではないものの)途中から川添刑事が大泉さんに見えてくるくらいぴったりで、お上手でした」と絶賛した。
報知新聞社