イスラム国の人質映像の取り扱い テレビ局の「放送基準」は?
後藤健二さん、湯川遥菜さんの2人が過激派組織「イスラム国」(IS)によって人質として拘束されて殺害された事件で、テレビ局が頭を悩ませたのは「イスラム国」側がネット上にアップした映像をどこまで放送するかということでした。というのは2人が拘束されていることは「イスラム国」がネット上に映像を発表したことで明確になり、2人の現状を知る最大で唯一の手がかりは「イスラム国」側の映像でした。 「イスラム国」がどんな組織なのかもテレビ局は「イスラム国」による戦闘行為の映像や「イスラム国」支配地域の映像を独自に撮影していません。そこでニュースでは「イスラム国」がネット上で公開した覆面兵士たちの示威行動などの映像を使うほかありませんでした。 彼らの映像ばかり使うと「イスラム国」のPRに手を貸す恐れがあります。欧米で相次ぐ若者たちの「イスラム国」への合流に道を開くことは避けたい。テレビの人たちは気にしたはずです。
日本民間放送連盟(民放連)の「放送基準」とは?
今回のような事件で組織側が撮った映像をどこまで使うかに関して、テレビ局全体で細かい基準があるわけではありません。 もちろん放送における「基準」は存在しますが、それは「一般的な形」のものです。たとえば民間放送の業界団体、日本民間放送連盟(民放連)は「放送基準」を定めていますが、条文が150以上と多くても「一般論」の羅列です。 特に、放送で気をつけなければならないのは青少年への影響。民放連の放送基準には特に子どもに悪影響を与えないように注意を促す条文がいくつかあります。 (17条) 児童向け番組で、悪徳行為・残忍・陰惨などの場面を取り扱う時は、児童の気持ちを過度に刺激したり傷つけたりしないように配慮する。 (19条) 武力や暴力を表現する時は、青少年に対する影響を考慮しなければならない。 17条と19条は、とくに青少年に対する影響に関する条文です。今回、「イスラム国」を扱った報道番組を授業で見た熊本の女子高生が過呼吸症候群に陥ったというニュースがありましたが、感受性の強い時期の子どもたちへの影響を考える必要があります。