開設20年のロースクールなぜ失速 合格率低迷、廃止相次ぎ半数に 岐路に立つ法曹養成
「国民に身近な司法」をうたった司法制度改革の柱の一つとして法科大学院(ロースクール)が開設されてから今年4月で20年を迎えた。法曹人口を増やし、多様な人材を輩出する拠点として期待されたが、入学者を募集するロースクールの数はピーク時の半分以下に。代わりにロースクールを経ずに司法試験の受験資格が得られる「予備試験」経由で法曹を目指す人が増えるなど、改革は岐路に立っている。 【図で解説】「法曹コース」導入で法曹資格取得の最短期間が短くなった ■誤算 「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、『この国のかたち』となるために、一体何をなさなければならないのか」 平成13年に国の司法制度改革審議会がまとめた意見書では、改革の根本課題をこう設定し「人的基盤の拡充」を柱の一つに据えた。これを受け16年、ロースクールが開設された。 誰でも受験できるが合格率数%と最難関の資格試験の一つだった司法試験制度も拡充した。 18年、旧司法試験を残した上で、原則としてロースクール修了者のみに受験を認める新司法試験も開始。合格率を7~8割と想定し、試験時のみの「点」での選抜から、「プロセス」として法曹を養成する方向へとかじを切った。 ただ、新制度では司法試験合格者数の目標値を従来の3倍にあたる「年間3千人」としたものの、24年の2102人をピークに伸び悩み、27年には「年間1500人程度」に下方修正。ロースクール修了者の合格率も、21年からの約10年間は2割台と低迷が続いた。 ロースクールの志願者も減少。17年には74校あった入学者の募集は停止や廃止が相次ぎ、今春時点で募集は34校となった。加えて司法試験自体の受験者数も、制度開始直後は増えたものの、年々減少していった。 ■予備試験組増加 一方、近年は23年に導入されたロースクール修了者以外も受験できる予備試験から法曹を目指すルートが人気だ。23年の受験者数は6477人なのに対し、昨年は倍以上の1万3372人。当初の理念とは裏腹に、「点の選抜」への先祖返りが進みつつある。 こうした状況に、ロースクールも変革が進む。令和2年には大学法学部とロースクールを計5年で修了し、法曹資格取得までの期間を最大2年短縮できる「法曹コース」が新設された。5年からはロースクール在学中の司法試験受験も可能となり、5年の司法試験受験者数と合格者数は、前年から増加に転じた。