山形屋は鹿児島市の〝本体〟だけじゃない…「老舗の看板にあぐらかくな」 グループ百貨店が立地する地方都市、後押し一辺倒の雰囲気に苦言も
山形屋(鹿児島市)の私的整理による経営再建が決まった。一夜明けた29日、店舗のある霧島市と薩摩川内市の住民らからは「閉鎖の予定はない」との一報に安堵(あんど)の声が漏れる一方、地域経済を引っ張る市街地の核店舗に対し「腰を据えた取り組みを」「老舗の看板にあぐらをかくな」などの厳しい意見もあった。 【写真】〈関連〉事業再生ADRが成立し経営再建に乗り出す山形屋=鹿児島市
旧国分市役所跡の再開発地に立地する霧島市の国分山形屋。街づくりにおける中心的な位置付けで増床移転し、利便性向上のため駐車場や周辺施設と結ぶ通路も整備された。霧島商工会議所の鎌田善政会頭(77)は「山形屋のブランド力は大きく、集客力は抜群。再建できるかどうかが地場商業の浮沈を占う。全力を挙げて応援していきたい」と力を込める。 再生計画やこれまでの経営に対する指摘も聞かれた。店舗前で無料コンサートを開く霧島国際音楽祭きりしま友の会の中堀清哲会長(56)は「街づくりの観点で重要な場所」としつつ、「再建には経営陣の刷新など腰を据えて取り組む必要があるのではないか」と苦言を呈す。姶良市の50代派遣社員女性も「老舗の看板にあぐらをかいている。魅力的なテナントもない」と足を向けない。 「山形屋の経営は殿様商売と揶揄(やゆ)されるが、その裏側には『殿様びいき』しがちな県民性がある」と指摘するのは、老舗文具店「国分進行堂」の赤塚恒久社長(71)。「鹿児島のシンボルと言うならば、何をもってシンボルとするのか定義する必要があるのでは」と、再建への後押し一辺倒の雰囲気にくぎを刺す。
薩摩川内市の川内山形屋は、メイン通りの国道3号沿いに位置する。空き店舗が目立つ中、商店街の柱として営業してきた。国道沿いの事業者でつくる太平橋通り商店街振興組合の仮屋立夫理事長(72)は「山形屋が閉店すれば、さらにさみしくなる。存続すると聞いて安心した」と胸をなで下ろす。 鹿児島市の山形屋と同じく、食堂の焼きそばは人気が高い。毎月食べるという薩摩川内市高江町の無職帖佐幸博さん(73)は「あって当然の存在」。鹿児島市までは遠いと感じる人のためにも、地方にも百貨店は必要と感じる。「若い人を引き込むようなイベントなどで集客力を上げ、頑張ってほしい」とエールを送った。
南日本新聞 | 鹿児島
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