なぜ少年マンガからメガヒットが生まれるのか? マンガ家・里中満智子が男性読者の傾向に笑ってしまった瞬間「みんな戦いに勝ったシーンを気に入る」
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性別によってマンガの読み方は変わる。だからこそ、男と女がいることにも、ふたつの性には分けられない人がいることも意味があるはず。そう語るのは、マンガ家の里中満智子だ。 【漫画あり】世代を超えて生きることの大切さを描いた『あすなろ坂』の名シーン
そんな彼女の自伝的一冊『漫画を描く 凜としたヒロインは美しい』より一部抜粋、再構成してお届けする。
私のマンガに登場する「いい男」
いつも女が決断して物語を引っ張っていくので、私はなかなかいい男が描けません。 「今度こそいい男かな」と思っても、途中で卑怯になったりします。でも初めてまっとうで、「彼ならいいな」と思ったのは『あした輝く』の香です。 その次は、『あすなろ坂』に登場する芙美の初恋の相手、新吾です。会津で死んだと思われていたのですが、実は生きていたという設定です。そして芙美が結婚する武史。私には珍しく、ひとつの作品の中で2人も素敵な男性が描けたと思っています。 あとは、芙美の孫の武雄。子どものうちに死んでしまうんですが、あの子が生きていたら、きっとすごくいい男になっていたのではないでしょうか。実在した子みたいに言っていておかしな話ですが、本当に好きな作品です。いろんな人からも「生きていく上で励みになる」と言われて、すごく嬉しいです。 連載マンガの場合、ラストを決めて描く場合と、「えいや」とはじめて、勢いで描いていくものとがあります。『あした輝く』も『あすなろ坂』も、だいたいの方向は決めていました。 ただ、途中で回り道するかもしれないといった予定変更はあります。ラストシーンはどうあれ、とにかくイメージとしては、すべてを肯定する形にして終わりたい。『あすなろ坂』は、芙美が若い頃に明治維新を迎え、昭和まで生きて、亡くなったところまで話は続きます。 連載が人気を得ると編集部も安心して「あとは好きなように続けてください」となるので、すごく嬉しいですね。 実は、『あすなろ坂』の何年か前に『アカシア物語』という作品を描いたのですが、1回目を描いた後ぐらいに病気になって休まなければいけなくなってしまい、当時は話が途中のまま連載を休むわけにはいかなくて、結局お話自体を終わらせることになり、中途半端になってしまったのです。 それが不完全燃焼で。そのときの担当者が「あれはやっぱりちゃんと描いたほうがいい。体力が戻ったらしっかり描きましょう」と言ってくださって。体調が戻ってから『あすなろ坂』を描いたのです。