【派遣社員の年金事情】派遣社員ですが将来「年金」がもらえるか不安です。正社員と年金制度は変わらないでしょうか?
派遣社員は「将来が不安定な働き方」といわれることがあります。その理由の一つとして、年金を挙げられることもあるようです。実際、「派遣社員は年金が少ない」といわれることも珍しくありません。そこで、派遣社員の年金について考えてみました。
派遣社員も、正社員と年金制度は基本変わらない
派遣社員も原則として、正社員と同様に厚生年金に加入します。「派遣社員だから厚生年金に加入できない」ということは基本的にないようになっています。当然、将来は正社員と同じ厚生年金を受給することができます。 ただし、労働時間や日数が短い場合は、原則として厚生年金に加入することができません。厚生年金は、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上になって初めて加入することになるからです。なお、それ未満の場合でも、週20時間以上が所定労働時間とされているなど、一定の条件を満たすと対象となることがあります。 また、2ヶ月以内の雇用期間で退職し、派遣元となる会社を転々としているような場合は例外となります。2ヶ月以内の期間を定めて雇用される場合も、厚生年金に加入しないものとされているからです。こういった場合は、自営業者などと同様に国民年金へ加入することになります。
厚生年金を正社員と同じだけもらえるとは限らない
正社員と同じように厚生年金に加入しているからといって「将来の年金額も正社員と同様に決まる」というわけにはいきません。厚生年金の支給額は、報酬額を基に決められる標準報酬月額がおおむね高ければ、それに伴って上がるようになっています。 厚生労働省年金局「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和4年度の標準報酬月額の平均は、およそ32万1000円となっています。 また、仮にある派遣社員が1日8時間で月20日、平均的な時給1488円(株式会社マイナビ「派遣社員の意識・就労実態調査」より)で働いたとすると、月給は23万8080円で、標準報酬月額は16等級です。先述した標準報酬月額の平均は20等級に該当することから、4等級分も差がつきます。 参考までに、厚生労働省の同統計によれば、厚生年金の受給平均額は約14万5000円です。年換算では174万円になります。一般的な正社員であれば、老後に毎月14万円以上は年金を受け取っていることになります。 対して、派遣社員の年金受給額はそれより小さくなる可能性が高いです。例えば、1990年7月1日生まれの方が月給23万円・賞与なしの年収276万円で20歳から59歳まで派遣社員として働いたと仮定して、公的年金シミュレーターで計算してみます。この場合、65歳から受け取る年金は137万円です。 同じように厚生年金に加入しても、派遣社員の場合、一般的な正社員よりも受給できる年金額は、少なくなる可能性が高いでしょう。