『エクスペンダブルズ』10年ぶり新作に感じる老いの影 俺たちのラングレンはまだイケる!
ランディ・クートゥアにもついに“見せ場”が
だが、レギュラーメンバーたちの減少による思わぬ副産物もあった。 ランディ・クートゥアの活躍である。 クートゥア演じるトール・ロードは、1作目から皆勤してはいるが、極めて影が薄かった。ただの映画ファンには、「この、いつも出てくるけどあまり目立たないいかついおじさんは誰なんだろう」と思われていたかもしれない。 ランディ・クートゥアは、UFC(総合格闘技のメジャーリーグ)において6度の世界王座に耀き、殿堂入りも果たした格闘技界のレジェンドである。 だが、この『エクスペンダブルズ』シリーズではあまり見せ場を与えられず、選手時代のクートゥアを好きだった(筆者のような)層は、歯がゆい思いをし続けたことと思う。 だが4作目にして、クートゥアにも見せ場が訪れる。だがそれは、アクション面ではない。意外にも「ロマンス面」においてである。 新人女性隊員・ラッシュ(レヴィ・トラン)と、なぜかいい雰囲気になる。このラッシュは、九節鞭などの武具を含んだ中国武術を使いこなす東洋系の美女である。ガチムチの西洋系おっさんファイターばかりの今シリーズにおいては、ひとりぐらい“一見小柄で弱そうだが、実はめちゃくちゃ強い東洋系カンフーマスター”の存在が必要だ。常にその役を受け持っていたジェット・リーに代わり、5作目からは(あればだが)、このレヴィ・トランに期待大だ。 パッと見、年齢差は30歳ぐらいありそうである。だが、クートゥアが意外な形で報われたことが嬉しい。絶対にクートゥアが尻に敷かれると思うが。
相変わらずキレキレなトニー・ジャー
まだまだ見どころは終わらない。なにしろ10年待たされたのだから。 今作は“ある理由”により、スタローンが早めに退場する(77歳のスタローンは、さすがに少し休憩したかったのだと思う)。そのため今回の実質上の主役は、いつも2番手だったステイサムである。スタローンなりに、「そろそろ若手に譲るか」と考えたのだろう。若手と言っても、ステイサムも56歳だが。 その他の新メンバーとして加わった、『マッハ!』のトニー・ジャーの動きは相変わらずキレキレだった。少しカメラが近く、その動きの全容がわかりにくかったのが残念だ。その分、臨場感はあったが。 意外な新メンバーは、『ブラック・レイン』のアンディ・ガルシアである。詳しくは書かないが、もちろんクセ者であり、キーマンだ。 この『エクスペンダブルズ ニューブラッド』に、興味を持ってもらえただろうか? 「観たくなったけど、前3作を観てないから……」 まったく問題ない。この4作目から観ても全然大丈夫だ。今までのあらすじを補填する必要などない。ストーリーも追わなくていい。深い考察などもっての外だ。 「マッチョな壮年ソルジャーたちが、好き勝手に殴って蹴って撃って爆破して暴れまわって敵組織を壊滅して、いつものバーで打ち上げして楽しく乾杯して終わる」 前3作とも、ざっとこんな話だ。 愛すべきバカの世界へ、ようこそ!
ハシマトシヒロ