FRBに対し政治的圧力あれば、市場から「冷水」-ケネス・ロゴフ氏
(ブルームバーグ): 米ハーバード大学の経済学教授で、元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのケネス・ロゴフ氏は4月30日、大統領が連邦準備制度に金融緩和を強いるような動きがあれば、金融市場が実質的にそれに制約を課すことになるだろうと述べた。
ロゴフ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「連邦準備制度の独立性を損なえば投資家は神経質になり、インフレ期待は上昇してドルは急落するだろう」と指摘。「良かれあしかれ、大統領がそのようなことを試みれば、市場が手厳しい冷水を浴びせると考えられる」と語った。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局が主要政策金利を二十数年ぶりの高水準に据え置く方針を示している現状にあって、11月の米大統領選で共和党候補指名を確実にしたトランプ前大統領がホワイトハウス返り咲きを果たした場合、当局に利下げするよう求めるのではないかとの臆測が投資家の間に浮上している。
ロゴフ氏はさらに、金融当局に緩和を求めて圧力をかけようとする動きは民主党進歩派の間にもあると話す。「ほぼ誰が権力の座にあろうと、金融政策を緩和させようと探るものだ」とし、「進歩派にも連邦準備制度の独立性を奪おうとする考えはある」とコメントした。
その上で、米金融当局が政治的影響を完全に退けるのは困難だろうとも分析。「もちろん連邦準備制度に悪意はないが、政治的混乱の真っただ中にあって『テクノクラート的な平静の孤島』であるのは難しい」との考えを示した。
このほかロゴフ氏は長期金利について、今後何年間にもわたり高水準で推移すると見込まれると語った。米10年債利回りは現在4.68%前後の水準にある。これに対し、過去10年間の平均は2.36%だった。
「長期金利は恐らく見渡す限り高めで、金融当局が利上げを巻き戻したとしても、非常に長期間、高止まりするだろう」と説明した。長期金利押し上げ圧力としては財政赤字のほか、サプライチェーンのグローバル化の減速もしくは反転の可能性を挙げ、短期金利にも多少の圧力が予想されると話した。