「太陽に当たれない」2万人に1人の難病 息子の人生を幸せに、悲しみ乗り越えた親子 #令和の子
中京テレビNEWS
日が暮れ、辺りが薄暗くなった愛知県尾張旭市の住宅街で、散歩に出かける親子がいる。母親の榊原妙(さかきばら・たえ)さんと息子の匠(たくみ)くん(16)。「たっくん、夜の散歩に行くよ!」妙さんに支えられて、匠くんが車椅子を押しながら歩いてくる。「匠は日が落ちてからしか外に出ることができないんです」妙さんはそう話す。 【動画】色素性乾皮症のたっくんの一日
2万2000人に1人の難病“色素性乾皮症”
匠くんは色素性乾皮症という難病を患っている。日本では2万2000人に1人の割合で発症する病気で、日本には300~600人の患者がいると言われている。 遺伝性で、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)という遺伝形式で遺伝する。この病気の患者は、日光の紫外線によって引き起こされる遺伝子の傷をうまく修復することができず、遺伝子の傷が残ってしまう。その結果として、皮膚がんが通常の数千倍の確率で生じる。そのため“太陽に当たれない病気”とも言われている。 また、日本の患者の6割以上が進行性の神経症状を発症している。匠くんもその一人だ。 個人差はあるが、神経症状が発症すると3~5歳頃から難聴、転びやすいなどの症状が出る。運動機能のピークは6~7歳頃で、その後10歳を過ぎたころから神経、知能、身体で症状が進み、15歳ごろに言語機能は消失するとされている。 16歳の匠くんは、神経症状が進み、自力で歩行することは難しく、車いすなどにつかまりながらであればゆっくり歩ける状態で、言葉はうまく発することができなくなっている。それでも、表情や身振り手振りで、意思疎通をしようとしている。
「7歳頃をピークにやれることが減っていく…」母親の辛い心境
母親の妙さんが匠くんの異変に気付いたのは生後1年が経った頃。少し外出した後に、顔が赤くただれ、やけどをしたようになった。しばらくして赤みが引くとソバカスができたという。妙さんは、すぐに近くの皮膚科を受診したが「ただの日焼けによるシミだ」と言われた。 しかし、同様の症状が続いたため他の病院を受診したところ、精密検査を受けることを勧められ、専門外来がある神戸の病院で、1週間検査入院をした。 その結果、匠くんは神経症状を伴う色素性乾皮症であると告げられた。匠くんが2歳になるころのことだった。「なんでたっくんが難病なんだろうって思いました。遺伝子を持っていないと発症しない病気だから、私たちのせいだなって思って。できることなら代わってあげたいって何度も思った。」と妙さんは当時の辛い心境を語った。 「成長するとともに普通だったら、歩けるようになったり、ママって言えるようになったり、成長がうれしいはずなのに、匠の場合は6歳をピークにやれることがどんどん減ってくる。それってただただ辛い。代わってあげられないことが辛い…」 そして30歳までになくなるケースも多いというこの病気について「子どもを看取らないといけないと急に言われた感じで、どうしようかなって…」