「石見銀山 群言堂」が提案する、根のある暮らし
世界遺産・石見銀山のある島根県大田市大森町。人口400人ほどの小さなこの町に根を張り、もの作りを行う会社がある。ライフスタイルブランド『石見銀山 群言堂』を展開している、「株式会社石見銀山生活文化研究所」だ。 群言堂の掲げるテーマは、「根のある暮らし」。商品を通して大森町での生き方や暮らし方を提案することで、それぞれの土地での暮らしの豊かさや楽しさを改めて考えるきっかけを作っている。 今回は、同社の所長を務める峰山由紀子さんと、企画を担当する柳澤里奈さん、半田祥子さんの3名にインタビューを実施。群言堂の商品の魅力や、もの作りへの思いについて話を伺った。
職人の技を守り、心地よく着られる製品を
「石見銀山 群言堂」の創業は1988年。峰山さんのご両親にあたる、松場大吉さんと登美さんが手作り小物の行商を始めたのがきっかけだそう。 峰山: 「行商をしていた当時、母はミシンを使うような作業には不慣れだったものの、デザインをすることがとても好きでした。そのため、接着剤とハサミで布を切り貼りしてデザインを行い、手先の器用な方々の力を借りながら商品を仕上げていました。 その頃に作っていたのは、バッグやポーチ、エプロンなど、暮らしの雑貨です。服を作るようになったのは、母が40代の頃。「自分が着たい服って何だろう」「自分らしくあるための服がほしい」と考えるようになったことがきっかけでした」 大森町では、曲がりくねった1本の細い通りに沿って建物が並んでいる。その建物は江戸時代に建てられた古いものが多く、周辺の自然も豊かだ。 群言堂は、自然や歴史を感じられる大森町に第1号店を出店したこともあり、アパレルにはこの町の風景が反映されていたようだ。 「色目や素材もそうですが、当時は曲がり道をイメージしてボタンを曲線状に付けたり、緩く織ることで生地に表情を持たせたりしていました。 母は衣類のデザインや製造に関してまったく勉強したことのない人だったので、自分の着たい服の絵をとにかく描いて、パタンナーさんにパターンを起こしてもらっていました」