いきなりサウジアラビアへ飛び、“毎日1億人が遊ぶMOBA”『Honor of Kings』の世界大会を観戦することになったMOBA初心者の話。「eスポーツワールドカップ」現地が二重の意味でとんでもなくアツかった
「サウジアラビアへ行かない?」──いよいよ夏の暑さが本格化してきた7月のある日、編集部のエラい人からこんなことを言われた。 【この記事に関連するほかの画像を見る】 話を聞いてみると、「eスポーツワールドカップの一環で『Honor of Kings』というMOBAの大会が行われるから、それを現地観戦してレポートしてほしい」という話らしい。 いや、私、『Honor of Kings』はおろか、まともにMOBAを遊んだことさえないんですが……⁉ しかし、行けるのはサウジアラビアである。こんな機会でもなければ、そうそう訪れられる場所でもない。もし億が一、石油王に気に入ってもらえたら人生ゴールインの可能性だってある。 それにeスポーツワールドカップの現地に足を踏み入れられる機会なんて、これを逃したらもう一生来ないかもしれない。また、MOBAに関してはまったくのド素人だが、格闘ゲームやFPSは大好き。同じ対戦ゲームだし、MOBAだって遊んでみたら意外と才能がある……可能性もなくはないだろう。 そして気づけば、私は『Honor of Kings』をスマホにインストールし、サウジアラビア行きのビザを申請していた。 というわけで、これは何にも知らない筆者がいきなりサウジアラビアの首都・リヤドへ飛び、「eスポーツ ワールドカップ」(以下、EWC)で『Honor of Kings』の世界大会を現地観戦することになった記録である。 現地時間の7月31日、約15時間におよぶ移動を終え、ついにサウジアラビアの首都・リヤドへ到着。筆者の滞在中はずっと晴れていたこともあり、最高気温は当たり前のように40度オーバー。30分も外に立っていると朦朧としてくるような環境だ。そのせいか、日中に少し散歩しても、車の交通量に反して歩いている人は極端に少ない。 すでにすさまじい暑さに少し追い詰められつつ、初めて足を踏み入れた中東の地と、これからはじまるeスポーツの大舞台の光景を想像し、心は少なからず踊っていた。 文・取材/久田晴 ■EWC現地の熱気がハンパじゃない。気温もハンパじゃない 到着の翌日、はじめて訪れたEWCの会場の感想はひと言、「デカい」だった。 なんというか、すべてにおいて規模がデカいのである。会場も、試合会場のモニターも、何から何までデカい。具体的な敷地面積は分からないが、移動用のカートがぶいぶい走っているくらいにはデカい。 そしてあちこちに『PUBG』に出てくるヘルメットやフライパンのオブジェが置いてあったり、『オーバーウォッチ2』のBGMが流れていたりで、ゲーマーとしては歩いているだけでもちょっと楽しい。敷地内にはマクドナルドやスターバックスコーヒーなど飲食店もたくさん並んでおり、eスポーツグッズの販売店もにぎわいを見せていた。 会場内を歩く人を見て行くと、さすがにスタッフをふくめ、現地や近郊から来たであろうアラビア系の人が多い。が、アジアやヨーロッパ、アメリカなどからはるばる訪れたと思われる人も少なくなく、『Honor of Kings』ではないが、日本のプロプレイヤーの姿も拝むことができた。 ちなみに日本のeスポーツチームでは「SCARZ」が『Honor of Kings』界隈で活躍を見せており、2022年には日本代表として世界大会への出場も果たしている。残念ながら今回のEWCへの出場は叶わなかったようだが、日本のプレイヤーのひとりとして、彼らの今後の活躍にも期待したい。 肝心の『Honor of Kings』大会会場はホールのひとつを占有する形で、4面の巨大モニターが選手のスタッツやゲーム画面を映し出す。観客席はステージにほど近く、サポーターの中にはお手製のパネルや幕を掲げ、声を上げて応援する姿も。 『Honor of Kings』は試合会場とは別のホールにブースも展開しており、そちらには訪れたトッププレイヤーのサインやキャラクターの大型パネル、さらに本大会でも大いに存在感を見せたチーム「KPL Dream Team」のポスターなどが飾られていた。 8月1日には集まったインフルエンサーたちによるエキシビジョンマッチ、8月2日には好きなチームの応援パネルを作る体験も催され、いずれも盛り上がりを見せた。 ■これだけ覚えれば大会観戦も楽しくできる? 『Honor of Kings』超大ざっぱ解説 さて、試合の模様をくわしくお伝えする前に、先んじて「そもそも『Honor of Kings』とは何なのか?」というお話を軽くさせていただきたい。というのも、試合内容をレポートする際にどうしても多少の専門用語が必要になるからだ。 逆に言うと、ここで紹介する最低限の知識があれば、「どっちのチームが優勢なのか?」くらいは読み取れるようになるはず。また、本作はプレイヤーが操作するヒーローの1キルがかなり重く、プレイヤー同士の戦闘は集団戦になることが多いため、生半可な知識でも盛り上がりのタイミングが分かりやすい点も嬉しい。 あらためてイチから紹介していくと、『Honor of Kings』は「MOBA」(マルチプレイ・オンライン・バトル・アリーナ)と呼ばれるジャンルのタイトルである。『リーグ・オブ・レジェンド』や『ポケモンユナイト』などが日本では有名なMOBAだが、『Honor of Kings』のルールは『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、LoL)にかなり近い。 ゲームは5vs5のチーム戦で行われ、互いの最終目標は相手の本拠地を破壊すること。自チームと敵チームの本拠地は「レーン」と呼ばれる3つの道で結ばれており、その間には「タワー」と呼ばれる砦のようなモノが立ちふさがっている。敵の本拠地を叩くため、原則的にはこのタワーを破壊して進軍の道筋をつくる必要がある。 また両チームともに「ミニオン」と呼ばれるNPCの戦闘ユニットを持つ。タワーは射程距離に入った敵を攻撃する特性があるため、先にミニオンをタワーへ進軍させ、攻撃をひきつけさせている間にタワーにダメージを与えるというのが基本的な戦い方だ。同時に、敵のミニオンは経験値やお金を手に入れられるリソースでもある。 レーン以外の「ジャングル」と呼ばれる空間には、どちらのチームにも属さないモンスターが現れ、こちらも倒せば経験値やお金を手に入れられる。特に見るからにデカくて強そうな「タイラント」は倒したときにバフを得られることもあって価値が高い。 お金は装備の購入、経験値はレベル上げ(スキルの強化)につながるので、もちろん多く稼いだ方がプレイヤー同士の戦闘で優位に立てる。その一方、各プレイヤーは一度デスしてしまうとリスポーンには短くとも10秒以上がかかり、その間は戦闘に参加できず、育成も止まってしまう。プレイヤー同士の戦闘では人数の有利が色濃く現れることもあり、特に高いランクではひとつのデスがとても重いのだ。 つまるところ、「どっちのチームが有利なのか?」を大ざっぱに見極めるためには ・プレイヤーの人数差、キル数の差 ・タワーの破壊数 ・稼いだお金の額 ・タイラントの撃破数 あたりに焦点を当てると分かりやすいだろう。 もうひとつ覚えておきたいのが、各プレイヤーが担う5つの役割。少し長くなるが、試合レポートの中にもたびたび登場する単語なので順に紹介していこう。 ・・クラッシュレーン 3つのレーンのうち、上側のレーン(クラッシュレーン)を主に担当する。「タンク」や「ファイター」に分類される、防御力が高く近接戦を得意とするヒーローが選ばれやすい模様。なんか相手のクラッシュレーンとタイマンしているイメージが強い。 ・・ミドルレーン 真ん中のレーン担当。「メイジ」と呼ばれる火力が高く、範囲攻撃に長けたヒーローが選ばれやすい。敵本拠地への距離がもっとも短く、さらに上からも下からも襲われる可能性があるので忙しそう。 ・・ファームレーン 下側のレーンを担当し、射程距離が長めの「マークスマン」が選ばれやすい役割。マークスマンは特に序盤では打たれ弱いため、後述する「ローム」と一緒に行動することが多い。お金を稼ぎやすく、なるべく装備を充実させて本格的な戦闘に備えたい。 ・・ジャングラー レーン以外のエリアで、ミニオンではなくモンスターを倒して育成する。序盤のレベルアップが早いため、ある程度育ったら積極的に敵を奇襲してキルにつなげたい。逆に敵のジャングラーがうまいと、いつ襲われるか分からず、レーンの押し合いがホラーゲームばりに怖くなる。 ・・ローム 「サポート」や「タンク」のヒーローが選ばれやすい役割。支援能力の高さが特徴で、基本的には誰かと一緒に行動する。特に序盤はマークスマンに寄り添ってあげるパターンが多いようだ。 少し長くなってしまったが、以上で『Honor of Kings』のざっとした解説は終了。本作は日本でも2024年6月から展開をはじめており、基本プレイ無料で誰でも遊べる。筆者も今回の取材の半月ほど前にプレイをはじめたのだが、先述の通り、ちゃんとMOBAを遊ぶのは本作が初めて。つまるところ、ゲームへの理解度はまだまだ浅い。 しかし、ゲームスタート時にはどのレーンへ足を運ぶべきか教えてくれたり、購入するアイテムは上級プレイヤーの購入リストをコピーできたりと、初心者的にはかなり入りやすい。マッチングも非常に早く、ランクマッチはまだ未検証だが、クイックマッチは遅くとも30秒以内にはゲームをはじめられるという快適っぷりだ。 日本でプレイしているとインドネシアやマレーシアなど、東南アジアのプレイヤーと一緒にプレイすることが多いのも印象に残る点のひとつ。実際、今回のEWCでご一緒したメンバーもアジア圏ではインドネシアや韓国、その他ではブラジルやメキシコにいたるまで、世界中から集められていた。 現地では参加者の何人かにお話を聞くこともできたので、簡単にその模様をお届けしておきたい。 ■参加者ミニインタビュー ・インドネシアのストリーマー・Fさん ──こんにちは! 今回はインドネシアから来られたとのことでしたが、ふだんはどのような活動をされているんですか? Fさん: 私はフルタイムでゲームのライブストリーマーをしていまして、YouTubeやTikTokを中心に、コンテンツを投稿しています。 ──『Honor of Kings』はどのくらいプレイしましたか? Fさん: 今年の5月ごろから、ブラジルサーバーを利用してプレイをはじめました。インドネシアでのリリースはグローバルと同じ、今年の6月だったので。 ──本作のどんなところを楽しんでいますか? Fさん: そうですね、自分のプレイヤースキルが試されるゲーム性や、無料でいろいろなスキンを手に入れられるイベントの多さが嬉しいところです。 ──今回の大会で、応援しているチームや選手はありますか? Fさん: 「KAGENDRA」というインドネシアのチームを応援しています! それとは別に、マレーシアの「LGD GAMING」もお気に入りですね。彼らのパフォーマンスは並外れたものだと思います。 ──今回、サウジアラビアで大会をみた感想を聞かせてください。 Fさん: 観客席のシートは快適ですし、HDスクリーンも大きく、さらに名だたる選手たちを直接見ることができ、とても驚きました。EWCの会場はとても大きかったですし、私にとってとてもいい経験になりました。唯一の不満を挙げるならば、非常に乾燥していて40度を超える、この天候ですね(笑)。 ・韓国の元プロゲーマー・HAKさん ──はじめまして! もともとプロとして活動されていたとお聞きしましたが、軽く自己紹介からお願いできますでしょうか。 HAKさん: はい、私は「HAK」というプレイヤーネームで、以前は台湾やタイ、日本のチームで『Alena of Valor』や『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』のプロゲーマーとして活動していました。いまは『Honor of Kings』をメインに、フリーのストリーマー、コンテンツクリエイターとして活動しています。 ──なるほど。いろいろなMOBAをプレイされてきたと思いますが、HAKさんが考える『Honor of Kings』の面白さはどんなところですか? HAKさん: そうですね、ゲームテンポが早いことが本作のいいところだと思います。現代は皆さん忙しい時代ですから、ワンゲームをサクッと遊べるのは長所ですよね。 あと、モバイルのゲームなので友達と集まって遊びやすいのも良いですね。PCのゲームだと、遊ぶ環境を持ちよるわけにもいかないですけど、『Honor of Kings』はスマホひとつあればどこでも遊べるので。 それから、個人的にはキャラクタースキンのセンスもとても良いと思っています。 ──これは私個人も少し気になっているのですが、プロの視点から見て、これから本作をはじめるプレイヤーに向けたアドバイスなどはありますか? HAKさん: えーっと……私のYouTubeチャンネルの動画を見て、毎日プレイすると早く上達すると思います(笑)。 もう少し具体的に話すならば、初心者のうちはクラッシュレーンやファームレーンのヒーローでプレイするのが良いかもしれません。他のポジションに比べ、考えなくてはいけないことが少ないと思いますし、チームを引っ張るキャリー力もあるポジションです。 ──今回、サウジアラビアで大会を見て、どんなことを感じましたか? HAKさん: サウジアラビアに到着したとき、「あぁ、本当に中東まで来たんだな」と思い、またこの暑さに燃え上がったような感触を抱きました。しかし、EWCのプレイヤーたちのパフォーマンスは暑さを忘れさせてくれるくらい素晴らしく、それぞれのプレイヤーの情熱を肌で感じることができています。 ■白熱の大会会場。決勝戦までゆるぎない強さを見せつけた「KPL Dream Team」がいろいろすさまじかった あらためて『Honor of Kings』大会会場の様子を記すと、やはり最初に目を引くのは4つに分かれた大スクリーン。両サイドの2枚に試合中のゲーム画面が映し出される形となっており、キル数、タワーの破壊数など、戦況を推し量るためのスコアも一画面にまとめられていて非常にわかりやすい。試合後には統計データなども映し出されていた。 ちなみに本大会の賞金は、1位が100万ドル。1~10位までの賞金総額は300万ドルにおよぶ。計12チームが集まり、最初の2日間はふたつに分かれたグループステージを戦い、勝ち抜いたチームが3日目のクォーターファイナルに集まり、さらに勝ち残れば最終日のセミファイナル、グランドファイナルへと駒を進める流れだ。 筆者は現地時間の8月1日~4日にかけて会場を訪れ、グループステージからグランドファイナル(決勝戦)まで、すべてではないが多くの試合を観戦することができた。ここからは、最終日に行われた準決勝、決勝の模様を詳細にお伝えしていこう。 ・準決勝:LGD GAMING(LGD) 対 VIVO KEYD STARS(VKS) 筆者が現地に到着したとき、すでに準決勝第1試合はかなり進行しており、LGDが2ポイントを先取していた。第3ゲームもLGD優勢で進み、結果は3-0でLGDが勝利。最終マッチではキル数も17-4と大きく開いており、終始LGDが優勢に試合を進めた模様だ。 3試合目のMVPに選ばれたのは、LGDのジャングラー・MusangKing選手。6キル1デス6アシストの活躍を見せた。 ・準決勝:AG GLOBAL 対 KPL Dream Team 続く準決勝の2試合目は、「AG GLOBAL」と「KPL Dream Team」の一戦。特にKPLは準決勝にいたるまでの試合でも圧倒的な強さを見せつけており、現地に詰めかけたファンの熱気もひとしお。前日に行われたクォーターファイナルでも、わずか10分ほどで勝利を収める強さを見せた。 最初のゲームでは序盤は互いに0キルのじっくりとした展開を見せるが、4分を過ぎたあたりでKPLが1本目のタワーを破壊する。しかしその後の集団戦や奇襲が実を結び、キル数ではAGがリード、一方でタワーの破壊数や育成スピードではKPLが優勢という形に。そして11分を過ぎたころにKPLが一気に攻勢をかけ、そのまま押し切って1ポイントを先取する。 2戦目は開幕から40秒ほどで、KPL・Chance選手がファーストブラッドを取る。その後もHai選手のダブルキルなどにより、1-5とリードを広げた。その勢いのまま、8分弱というすさまじいスピードでKPLが2ポイント目を取る。 続く3戦目は、3分ごろに試合が動き、KPLのPang選手が連続キル。5分を過ぎたころにはキル数で6-1と、KPLが大きくリードを築く。さらに6分ごろには同じくPang選手が4連続キルを決め、10-2まで差が広がる。その後も勢いが落ちることはなく、10分を待たずして試合終了。KPLが3ポイント目を獲得し、ストレートで決勝進出を決めた。 これにより、決勝はKPL対LGDという形になる。 ・ショーマッチ 決勝戦の前に挟まれたのが、各チームの選手やインフルエンサーが混合した特別チーム「TEAM HONOR」と「TEAM KINGS」による2本先取のショーマッチ。開始から1分を過ぎたころ、KINGSのAbh選手がファーストブラッドを取る。試合はじっくりと進み、7分ごろでキル数は2-5、タワーをお互いに1本ずつ折った形となる。 その後も攻防は続き、12分を過ぎたころには5-12とKINGSがリードを広げる。しかし試合は20分以上にまでもつれ込み、21分を越えたころにKINGSがチームキルを決め、ついに勝敗は決した。 KINGSが1本を先取した形ではじまる2戦目、2分ごろにKINGSのSenkoo選手がファーストブラッドを上げる。3分半ごろには4-1とKINGSがリードし、1戦目よりはスピーディに試合が進んでいる様子だった。その後もKINGSが勢いづき、8分ごろにはキル数で15-3と大きく引き離す。リードは縮まらないまま、13分を過ぎたあたりでKINGSが勝利。ショーマッチの勝者は「TEAM KINGS」となった。 ・グランドファイナル(決勝) LGD GAMING対KPL Dream Team 先述の通り、決勝戦はいずれも準決勝を3-0のスコアで勝ち抜いてきた両チームがぶつかり合う形となった。どちらもクォーターファイナル、セミファイナルともに1ゲームたりとも落としておらず、素人目にもそのレベルの高さはうかがい知れる。決勝を前に客席はほぼ埋まり、惜しくもトーナメントで敗れたプロプレイヤーたちの姿も見られた。 選手入場の前には4面の大型スクリーンをフルに使ったアニメーションも披露。来たる頂上決戦に向けて、会場の雰囲気は大きく高まる。 あらためて両チームの紹介をしておくと、まず「KPL Dream Team」は中国のさまざまなチームから精鋭たちが集められた、文字通りのドリームチーム。ふだんはライバルとして対峙するプレイヤー同士が共闘するというシチュエーションを聞けば、彼らのふだんの活躍を知らない身にもそのアツさが伝わってくる。 対する「LGD GAMING」は、シーズン2チャンピオンシップで優勝を果たしたマレーシアの強豪。KPL同様、クォーターファイナル、セミファイナルともに1ゲームも落とすことなく勝ち上がってきた。 1試合目、序盤からたびたび交戦する両チームだが、1キル目が発生したのは2分ごろ。ミッドレーンでKPLのRONG選手がファーストブラッドを取る。次に試合が動いたのは6分が近づくころで、KPLがファームレーンの1本目のタワーを破壊、さらにその後の集団戦でRONG選手がふたつ目のキルを取った。 さらに7分を過ぎたころ、ミッドレーンで集団戦が発生。この場面はKPLが2キル、LGDが1キルを取る形で落ち着く。9分ごろにもファームレーンでKPLが攻勢を仕掛けるが、ここは両チームキルが生まれることのないまま解散となった。しかし、その後もKPLが優位に戦闘を進め、10分時点でキル数差は1-6となる。 13分を過ぎたころにはLGDのタワーのほとんどが破壊されてしまう。一方でKPLはまだひとつのタワーも破壊されておらず、かなりの優勢を築いていることがうかがえた。15分ごろにはLGDの本拠地付近で集団戦が発生し、このまま押し切るかとも思われたが、LGDのMusangKing選手の連続キルなどの活躍でいったん押し戻す。さらにその後、ミッドレーンでの集団戦でLGDがアドバンテージを得、ふたつのタワーの破壊に成功した。 しかし、18分ごろにはKPLが再度本拠地に攻撃を仕掛け、1戦目は決着。キル数差は10-15、LGDも終盤にかけて粘りを見せたが、試合後のスタッツを見る限りでは終始KPLペースで進んでいたようだ。 少しのインターバルをおいてはじまった2戦目、序盤は静かな立ち上がりを見せるが、2分すぎに最初の集団戦が発生し、KPLのHai選手がファーストブラッド。さらに4分ごろにもファームレーンで戦闘が起こり、両チームがキルを取ってキル数は1-3とKPLがリードする。6分を過ぎるころには、KPLが3本のタワーを破壊していた。 8分を越えたあたりでKPLはクラッシュレーンのタワーをすべて破壊。10分を過ぎたころにはKPLが早くも本拠地への攻撃を仕掛けるが、ここはLGDも辛うじて耐えた。しかし次の攻撃はしのぎ切れず、13分ごろに決着。KPLが優勝へ王手をかける。 続く3試合目、ファーストブラッドを取ったのはLGDのJR選手。その後、すぐにKPLのFly選手も1キルを取り、序盤は均衡の様相を見せる。そろそろ試合開始から5分が経とうかとしているタイミングで、KPLがファームレーンで最初のタワーを破壊、さらに6分ごろにはクラッシュレーンでも1本目のタワーを破壊し、レーンの押し合いで有利を築く。 試合が動いたのは7分を過ぎたころ、KPLのFly選手がダブルキル。KPLは4本、LGDは1本のタワーを破壊した形となり、すでにKPL側の前線が大きく上がっていることが見て取れた。11分30秒ごろにはすでにクラッシュレーンの1本、KPLによるLGD本拠地への攻撃がはじまった。 その後も大きく流れが変わることはなく、終わってみれば、KPLが3-0のストレート勝ち。大会全体を通じて見せてきた強さを遺憾なく発揮し、みごと優勝を果たした。 「KPL Dream Team」のどこがそれほどまでに強いのか、まだMOBA素人の筆者には十分に表現することは叶わない。 が、大会会場に集まったファンの数、熱気は頭ひとつ抜けていたように思える。応援用の幕やポップを持ち寄り、息を合わせて応援の声を上げる様子には圧倒されるものがあった。それだけ、KPLというチームが期待を集めていたという証でもあるのだろう。 試合後にはステージ上でKPL選手へのインタビューなどが行われ、拍手のうちに大会は終了を迎えた。 「eスポーツこそ、生で観るのが最高に面白い」 今回、EWCに参加してあらためてそう思った。観客のどよめき、選手の周りに漂うピンと張り詰めた空気、ひとつの会場に集まっているという一体感……そういったものがあわさり、「自分は今、すごい場所にいるのかもしれない」という気分にさせてくれる。 いきなり「サウジアラビアへ行こう!」というのはやや非現実的かもしれないが、幸い、いまでは日本でもたくさんのeスポーツイベントが行われている。少しでも気になっている方は、ぜひ何かしらのリアルイベントに足を運んでみて欲しい。現地はいいぞ! 『Honor of Kings』について言えば、筆者は今回「ド素人」の状態で世界最高峰の戦いを観戦した形となる。振り返ってみればムチャクチャな話だ。しかしそれでも、会場で一体となって試合を観るという行為はシンプルに楽しく、トッププレイヤーたちの戦いからは「俺ももっと強くなりたい」と思わせられる刺激を受けた。 そして何より心に残ったのが、世界の広さだ。これまで知らなかったゲームにも、世界中から人が集まる大舞台があり、そこには全身全霊をかけるプレイヤーたちと、彼らの戦いに熱狂するファンがいる。もちろん『Honor of Kings』以外にも、無数のゲームでそんな場所が生まれている。 世界はまだまだ広く、新しい刺激に満ちている。当たり前の話ではあるのだが、そのことを身をもって実感する旅になった……。 最後になるが、今回のイベントでは『Honor of Kings』関係の現地スタッフの方を筆頭に、非常に多くの方に助けていただいた。皆さんへの感謝の言葉をもって、この記事を締めたいと思う。本当にありがとうございました!
電ファミニコゲーマー:
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