大企業が「賃上げ5%以上」を目指す一方で、「中小企業」でその動きが鈍いそうです。一体なぜですか?
2024年の春闘で、連合は「賃上げ5%以上」を目指すことを公表しています。経団連も、その目標に理解を示したうえで、物価上昇を上回る賃上げを経営者に促しています。 とはいえ、現実的に「賃上げ5%以上」を目指しているのは一部の大企業だけで、中小企業に至っては、その多くがまだまだ積極的ではありません。本記事では、連合が「賃上げ5%以上」を目指す背景や、中小企業でその動きが鈍い理由などを解説します。
「春闘」とは何か?
春闘(春季生活闘争)とは、2~3月頃にかけて行われる、労働組合と企業側との賃金や労働条件に関する話し合いです。多くの労働組合では2月頃から、新年度(4月)の賃金や労働条件に関する要求を経営者に提示します。この要求に対する企業からの回答が3月頃になることから、この期間の要求や交渉を総称して「春闘」と呼んでいます。 ◆春闘の要求とは 春闘で労働組合が必ず要求するのは「賃上げ」です。春闘における賃上げには、「ベア(ベースアップ)」と「定期昇給」があります。ベアとは基本給の底上げのことで、定期昇給は勤務年数などに応じて上がっていく賃金のことです。 春闘では、一般的にベアと定期昇給の両方が要求されます。また、賃上げの他にも、労働環境や労働時間などに関するさまざまな要求を行います。 ◆連合の役割 春闘の要求や交渉は各企業の労働組合が行いますが、そのまとめ役を担っているのが、700万人の組合員が加盟する連合(日本労働組合総連合会)です。 そのため、賃上げに関しても、連合が社会全体の経済状況や労働者の現状を見渡したうえで、全体方針を決定しています。その方針を受けた産別(産業別組織)が具体的な要求水準を決定し、単組(組合)がその水準に沿って要求をまとめて交渉します。
「賃上げ5%以上」を目指す背景とは
連合が2024年の春闘の目標に「賃上げ5%以上」を掲げた背景には、物価に賃金の上昇が追いついていない現状があります。2023年の現金給与総額は、前年比1.2%の上昇でした。これは、3.58%という、約30年ぶりの大幅な賃上げが実現した結果です。 ただ、その一方で、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)が前年比3.1%上昇したため、実質賃金は2.5%の減少となっています。このようなことから、連合では2024年の春闘に「賃上げ5%以上」という目標を掲げて、物価高を上回る賃金を実現させようとしています。