「やさしい」アイアンと「難しい」アイアン、実際には何が違う? 自分にピッタリ合うアイアンの選び方をフィツターと考えてみた
クラブの解説記事を読んでいると必ず目にする「やさしい」「難しい」という表現。具体的にはどういうことなのか? ギアオタクでクラブフィッターの小倉勇人と改めて考えてみた
自分が求めている性能を明確にしたい
クラブフィッター小倉です。今回は、アイアンがテーマです。先日、お客様からこんなご質問を受けました。「やさしいと言われるエンジョイゴルファー向けアイアンと、難しいと言われるアスリート向けアイアンは根本的に何が違うんですか?」と。なかなか一言で説明するのが難しい難問です。 ものすごく簡単に説明するならば、やさしいアイアンは、ミスすることを前提に設計されているモデル、難しいと言われるアイアンは、正しいスウィングができた時に、その通りの弾道が打てるモデルとなるでしょうか。 一般的にやさしいと言われるモデルは、重心が低く、そして深く設計されています。重心が低いとロフト角以上にボールが上がりやすくなり、低スピンになりやすく、重心が深いと、芯を外した時のヘッドのブレが小さくてすみ、飛距離ロスや曲がりを抑えやすくなります。 これらの効果は、ミスショット時でも安定してボールを前に飛ばしてくれます。しかし反対にボールを故意に曲げる、弾道を低く抑えるといったボールをコントロールする行為には邪魔になります。曲げる、低く抑えるといった打ち方をしてもクラブヘッドの機能がそれらの打ち方を打ち消してしまうからです。 反対に難しいと言われるクラブは、適度な重心の高さを持ち、浅く設計されています。重心が高いと適度なスピンがかかり、重心が浅いとヘッドのコントロールがしやすくなります。これらの効果は、ヘッドの入射角やフェース向きによってボールをコントロールしやすくなります。その反面、芯を外した時に飛距離ロスや曲がりが大きくなりやすいです。 個人的には、やさしいというのは、人によって変わってくると思っています。打点が安定しないゴルファーにとっては、前述したやさしいと言われるモデルをやさしいと感じるでしょう。しかしある程度ボールをコントロールできるゴルファーにとっては、そういったモデルは決してやさしいとは感じないはずです。 その証拠にツアープロのほとんどが、いわゆる難しいと言われるモデルを使用しています。これはシビアな環境から最良のプレーを求められるため、緻密なボールコントロールが必要だからです。ボールコントロールをしようとして、それが打ち消されてしまうアイアンは、彼らにとって決してやさしいアイアンではないのです。 現代は、多種多様なアイアンが販売されています。一口にやさしいエンジョイゴルファー向けモデルといっても直進性が高いモデル、ボールが上がりやすいモデル、飛距離の出やすいモデルと様々です。もちろんアスリート向けモデルにも様々な種類があります。 自分がどんな性能を求めているかによって自身がやさしいと感じるモデルは変わってきますので、アイアンの買い替えをご検討の方は、本当に自身が求めている性能は何なのかを明確にしてからモデルを選ぶようにしましょう。そうしないと自身にとって本当にやさしいアイアンに出合うチャンスを逃してしまうと思いますよ。
小倉勇人