“ムーディ勝山と犬”の写真、なぜ突如バズった? 本人&写真家に聞く
最近、SNSで“あの”芸人の写真がバズっていることを知っているだろうか。白スーツに身を包み、コーラス隊を引き連れて現れたのが「右から左に受け流す」でお馴染みのムーディ勝山だ。 【写真】「僕を知らなくてもおもしろい」 万バズを連発しているムーディ勝山とコーラス隊の写真 なんとも言えないシュールさと上品さ、どんなシチュエーションでも崩れない表情なども相まって、XやInstagramでは万バズを連発し話題になっている。今回はそんなムーディ勝山と、写真家・大竹宏明氏に、一連の写真の裏側について語ってもらった。 ・最高のタイミングで訪れた2人の出会い ──最近、XやInstagramでムーディさんのお写真がかなり話題になっていますが、SNSで投稿を始めたきっかけはなんだったのでしょうか? ムーディ勝山:Xを通して、大竹さんが連絡をくれたのが始まりでしたね。2017年ごろだったと思います。 大竹宏明(以下大竹):ムーディさんにメンションをしてお声がけをさせていただきました。 ──大竹さんは、以前から芸人さんのお写真を撮られていたのでしょうか? 大竹:いえ、最初は女性の方を撮影することが多かったんです。でも何かもっとおもしろくならないかなと思って、モデルさんにちょっとシュールなポーズをしてもらったんです。街中で変なところに座ってもらったり、隙間に入ってもらったり、壁にうなだれてみたり……。その雰囲気がすごくおもしろいなと思って、もっとシュールな人って誰だろう? と考えたときに頭に浮かんだのがムーディさんでした。 ムーディ勝山:そのとき、たまたま僕がボケで「モデルの仕事の依頼等はDMで受け付けます」というアイドルの方がよく書くような文をXのプロフィール文に載せてたんです。そしたら大竹さんがそれを真に受けて連絡してくれて、「あ、本当に!?」って驚きました(笑)。 一同:(爆笑) ──まさかのボケが本当になりましたね(笑)。 ムーディ勝山:しかも当時、僕も本気でそういう写真を撮ってくれる人を探していたんです。たとえばロケで撮影しているときに、ディレクターさんが「海沿いをゆっくり歩いてください」という指示をするのですが、海沿いの景色のなかで僕がスーツ姿で歩いているのが『なんかおもしろいな』って自分でも感じていたんです。だから大竹さんから連絡が来たときは、「僕もそういうのをやりたかったんですよ!」という思いでした。 ──お互い求めているものとタイミングがバッチリ合ったんですね。最初にバズったのはいつごろですか? ムーディ勝山:大竹さんが仕事で一軒家のスタジオを借りたときがあったんですけど、そこがプール付きのスタジオだったんです。そこで撮影をすることになって。「プールがあるんですね」「飛び込みますか」と。水中カメラとかいろいろ用意して2人で撮りました。ポストに『ニルヴァーナのジャケット。』というタイトルを添えて投稿したのですが、この投稿に少し反響がありましたね。 大竹:このあたりから徐々に話題になってきたと思います。 ・コーラス隊と奇跡の出会い ──こちらの『よく見るとチューチュートレインしているコーラス隊。』というポストも6。8万いいね(2024年6月23日時点)とかなり反響がありますね。“コーラス隊”というのは、このわんちゃんたちのことでしょうか……? ムーディ勝山:そうですね。大竹さんの知人の方が、飼っているわんちゃんと写真を撮ってほしいとおっしゃっていただいたんです。そしたら車でわんちゃんを連れてきてくれて……。僕が『コーラス隊』と名付けて投稿させていただいたら、これもまたかなり反響がありました。 大竹:ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアという犬種なんですけど、その方はこのわんちゃんを多頭飼いをされていて、ムーディさんと掛け合わせたらおもしろいだろうなと感じていました。それで実際に一緒に撮ってみたら、写真に一気にかわいらしさが増したんです(笑)。 ムーディ勝山:僕ひとりだと哀愁とおもしろさ、という感じなんですけど、そこにコーラス隊が入ることでエレガントさとおしゃれさがプラスされたんですよね。 ──なんだか、雑誌の表紙のようなおしゃれさがありますよね? ムーディ勝山:おしゃれすぎておもしろいですよね。 大竹:最初は一緒に並んだらおもしろそうだな、と軽く考えていただけだったのですが、予想以上の反響に驚きました。ここまで反応があるとは思っていなかったので。 ムーディ勝山:これで幅がまたグッと広がったように感じます。いまでは僕だけの写真が3日くらい続いたら、「わんちゃん見せてください」って言われるんです。 大竹:おじさんじゃなくて、わんちゃんが見たいって(笑)。 ・“爆笑”でつながる2人の関係性 ──改めて、大竹さんから見てムーディ勝山さんはどんな存在でしょうか? 大竹:本当、どこにいてもおもしろいですよね(笑)。 ムーディ勝山:このあいだ写真じゃなくて動画を撮影したんですけど、そのときなんかひっくり返るくらい笑ってましたよ。でもこっちは撮られている側なので微動だにしないで、真剣な表情を保っていました(笑)。 大竹:船でムーディさんと犬が右から左に流れるんですよ。おもしろいじゃないですか(笑)。 ムーディ勝山:おまけで最後は鴨もついてましたよね。船、ムーディ、犬、車、最後に鴨……。 ──本当に現場の楽しさが伝わってきますね(笑)。 ムーディ勝山:楽しいですね。撮影場所もお互いにふと思いついた場所を提案し合っているのですが、その工程も楽しくておもしろいです。街を歩きながらおもしろいことを探すのが芸人の私にとってはすごく楽しいですね。一種の大喜利じゃないですけど、どこで撮ったらおもしろいかな、と考えるのもワクワクします。 ──写真のタイトルはムーディさんがつけているのでしょうか? ムーディ勝山:そうですね。写真とその一言がカチッとハマったときに、たくさんの反響をいただくことが多いです。 大竹:でも本当、ここまで笑ってるのは僕たち2人だけなんじゃないかと思っていました。 ムーディ勝山:正直、「大丈夫かな」と少し不安ではありましたね(笑)。 大竹:でもだんだんみなさんにも楽しんでもらえているのが伝わってきて、反応があると嬉しいですね。 ──糸井重里さんがXで反応されていたり、星野源さんのラジオで紹介されたりなど著名人の方にも届いていて、広がりを感じますよね。 ムーディ勝山:糸井さんに反応してもらえたときは、本当に嬉しかったです。星野さんのラジオも聞かせていただいたのですが爆笑してくれて、あの星野さんをちょっと元気にさせることができたのかな……(笑)。 大竹:写真で笑わせることができましたね。僕たちのやってきたことは間違いじゃなかった……!(笑)。 ・SNSを通じて“ほっ”とさせる笑いを ──いままで印象に残っている声などはありますか? ムーディ勝山:僕たちの投稿に対して、「Xってこういうのでいいんだよな」って言ってくれた方がいたんです。最近はSNSも攻撃的な投稿とか、炎上なども多い時代じゃないですか。そんななかで、こういう誰も傷つけないクスッと笑えるような投稿だから、たくさんの人に反応していただけてるんじゃないかなと思うんです。 コメントで「平和な投稿だな」とか「元気もらってます」「毎日見るのが日課になってきた」という声をいただいてて。「悔しいけどフォローした」というコメントには思わず心のなかでツッコミましたけどね。なんで悔しいねん!って(笑)。 一同:(爆笑) ムーディ勝山:だから、最近は僕たちの写真を見て癒されたり元気を出している人がいるのかなと感じています。 大竹:SNSで反応をもらったり、糸井さんや星野さんの反応を知って僕たちも元気になりました。あと僕から見て、ムーディさんって誰が見ても嫌な気がしないと思うんですよね。品があるんです。もちろん誰もが知っている芸人さんというのもありますが、上品さというか、エレガントさがあるんです。だから年配の方から若い人まで、幅広い世代に受け入れられているんじゃないかと思います。 ムーディ勝山:星野さんのラジオで紹介してくれたのも、18歳のリスナーの方みたいなんです。その世代って、僕が売れていたときに僕をテレビで見ていた世代ではないんですよね。僕のことを“知らなくてもおもしろい”写真になっているからこそ、広がっているのかなと思います。 それもあって、タイトルにはムーディ勝山ではなく“ムード歌謡歌手”と書くようにしています。僕のネタを知ってても知らなくても、おもしろいなと思って欲しいので。 ──誰も傷つけない、知らなくてもおもしろい。いろんな要素が合わさって、温かい広がりを起こしているんですね。これからの投稿も楽しみです! 大竹:写真展とかもいつかできたらいいですね。 ムーディ勝山:ずっと言ってるのは、スキー場でマイクを持ちながら滑っている写真を絶対撮りたいです。めっちゃおもしろいだろうな。 大竹:コーラス隊も連れて行こう!(笑)
はるまきもえ