「私はどこに属しているの」…日米で生活したルーテル高1年・嶺山さん、苦悩の末、見えた答えとは 高校生エッセーコンテストで特別賞
英語検定試験「TOEIC」を実施する国際ビジネスコミュニケーション協会の高校生エッセーコンテストで、ルーテル学院高(熊本市中央区)1年の嶺山桃さんが特別賞を受賞した。米国で8年間、帰国後の日本で4年間それぞれ暮らして感じた帰属意識をめぐる悩みと、それを乗り越えたエピソードが評価された。 父親の転勤のため2012年に4歳で渡米。20年まで西部オレゴン州で過ごし、中学1年生で地元熊本に戻った。 エッセーは「国境を越えた帰属意識」がテーマ。嶺山さんは米国在住時、家では家族と日本語で日本国内の話題を語り合うことが多かった。一方、学校で米国の芸能や流行の話で盛り上がる同級生らには、なじむことが難しかったという。 英語を習得しても、習慣や文化まで完全に理解はできなかった。「私はどこに属しているのか」。混乱し、成長するにつれ不安が募っていったという。 「生まれ故郷にこそ居場所がある」。そう思い続け、熊本に戻ってきた。しかし、米国で当たり前と思っていた振る舞いや考え方を、理解してもらえないこともあった。帰国してしばらくは日本語の読み書きも十分ではなかった。
悩み続ける中、支えてくれる友人や教師らは、嶺山さんの個性を尊重してくれた。違いは障壁ではなく、人とつながる〝きっかけ〟だと気付き、「どちらか一つの文化にとらわれる必要はない」と考えられるようになった。エッセーの最後には「もう日本人かアメリカ人か選ぶ必要はない。二つの世界に属していることが、私を豊かにし、誇りになる」と記した。 「日本で帰国生と言うと羨望[せんぼう]のまなざしで見られがちだが、私のように悩む人も少なくない」と嶺山さん。「エッセーを通して私の経験を多くの人に知ってもらい、同じような悩みを抱える人の助けになればうれしい」と話している。(米本充宏)