老後の住まい「住み替え」成功と失敗のリアル 「自宅が売れない」「新居でトラブル」想定外の事態に直面も
ありったけの貯金と退職金を頭金にして、なんとかローンを組めました。結局、旧居と新居両方の維持費、新居のローン返済が家計を圧迫。今は、旧居を大幅値下げし、買い手がつくのを待っているそうです。それでもダメなら買取業者に買い取りを打診する予定だといいます……。 【住み替え失敗例】 一戸建てからペット可マンションに引っ越ししたものの、ペットトラブルに巻き込まれる 60代半ばになるNさん夫婦は、一戸建てから中古マンションへの買い替えを決めました。自宅は2階建ての4LDKなので、子どもが独立し夫婦2人で住むには広すぎると判断したのです。
幸い、学校や公園、ショッピングモールがある便利なエリアだったため、子どものいる若い夫婦にすんなりと売却が決定。新居には、愛犬2匹と一緒に暮らせる駅近の中古マンションを購入しました。ところが、住み始めてから思わぬ事態に……。 ある日、犬の散歩に行こうとドアを開けたところ、初めて見かける住人がブツブツ言いながら慌てて部屋に戻っていきました。不審に思って顔見知りの隣人にたずねると、ペットアレルギーで犬嫌いの住人だと思うとのこと。
実はこのマンション、5年前までペットの飼育不可で、ペット可に規約改正する際も、もめたそうです。Nさんの前の所有者も犬を飼っていて、「嫌がらせを受けている」と話していたそう。 この物件はリノベーション業者が買い取り、再販売していた物件だったため、前の所有者から直接話を聞く機会がなかったのが盲点でした。 「愛犬のことなのだから、購入前に安心してペットを飼える環境かしっかり確認すべきだった」と、反省しても後の祭り。今は夫婦で、再度家を買い替えるか検討しています。
■誰もが迎える老後だから これからの住まいについて皆さんにはたくさんの選択肢があります。60代だからといって初めから可能性を否定したり、あきらめて不便さや不安を放置したりする必要はありません。 所有している家とどう向き合うのが正解なのか。わが家にはいつまで住めるのか、維持費はいくらかかるのか。 誰もが迎える老後、誰もが必要な住まい。この問いと向き合わなければ、安心して老後を迎えることはできません。
人生の終焉に向けて、一人でも多くの人が理想とする住まい、納得する住まいに出会い、よりよい人生を歩まれることを願ってやみません。
日下部 理絵 :住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家