『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S2は母性が主題 オリヴィア・クック×フィア・サバンが語る
――このシリーズの登場人物は、決して正しい倫理観を持っているとは言えないのに、とても魅力的に映ります。これらのキャラクターの非難されがちな面を強調しながらも、説得力を持たせるために、どんな演技を心がけていらっしゃるのでしょうか? クック:演技とは自分自身と真実のプリズムから生まれるものだと思っています。言動の裏にある動機を理解しなければなりません。この地球上で、自分自身を顧みて「自分はなんて悪党なんだろう」なんて思う人はいませんよね。恐怖を感じた人間は自暴自棄になり、自分を正当化しようとします。だから、真の悪人を演じるのは一種のカリカチュアだと思います。 サバン:それに、俳優として演じていて違和感を感じ、少し考え直したときのほうが旨みのある演技ができると思います。なぜなら、自分自身が葛藤しているから。「このような行動を取る人物をなぜ愛しているのか?」とか。その方が、何が何でも正義を貫く人物を演じるよりも、楽しいしやりがいがあります。だって、そういう人いるじゃないですか。 クック:そう、私たちの存在は(現実の)合わせ鏡でもあるのです。アリセントは……ハンドブレーキが外れた状態で山の麓に向かって急降下しているような状態です。彼女は本当に恐怖のどん底にいて、彼女の卵を王座に就かせることを盲信しているのです。彼女が唯一の目撃者なのに誰も彼女を信じようとせず、他のみんなと同じくらいずる賢い存在だと思われていることに納得がいっていません。彼女は自分自身をこんがらがった状態に置いてしまい、息子たちも彼女に背を向けるのです……。不思議なもので、私はまだアリセントと完全に分離していない気がします。彼女はまるで、幻影のような存在です。撮影していないときも、彼女は廊下を歩いている幽霊のような存在に感じました。だから、常に彼女のことを考えていて、キャラクターにさらにレイヤーを追加したいと思っています。素晴らしい脚本家たちと、次に何が起こるのか、アリセントはこの瞬間に何を考えているのか、など行動原理についていつも話し合っていました。撮影が始まる前に2週間ほどリハーサルの期間があって、台本を確認したり、歩き回ったりしているだけでも、いつも彼女のことを考えていました。そして、このチームはとても良い関係を築けています。いつもお互いに話し合っているので、撮影現場ではすべてが本能的に感じられます。より自由に、より生き生きと感じられるし、お互いのリズムを見つけることに集中できるのです。 ――現象とも呼べる巨大なファンダムを持つ『ゲーム・オブ・スローンズ』、そしてその前日譚である『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の一部になるというのは、どういうものなのでしょうか? クック:本当に巨大です。最初のシーズンの撮影中は、あえてあまり深く考えないようにしていたのですが、いざ放送が始まると、ファンダムの大きさとこのシリーズがいかに愛されているかの重みを感じずにはいられませんでした。そして、それは間違いなくシーズン2に引き継がれています。2作目のスランプに陥りたくはありませんでした。シーズン1と同じくらい、いやそれ以上に素晴らしいものにしたいと思いました。 サバン:自分たちでハードルを上げるために。私たちは同じ状況だったと思うんですが、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』にキャスティングされてから『ゲーム・オブ・スローンズ』を観ました。それでようやくスケールの大きさを知り、世界観やユニバースに感動しました。でも、自分がその一端を担っているとは、実際に出来上がるまでわかりませんでした。 クック:撮影現場では、あまり考えすぎてもいけないと思うんです。それが感染症のように広がって、自分の本能とは違う動きが出てしまったりするようになるので。撮影中はもう少し修行僧のように、雑音を遮断する必要がありました。
平井伊都子