あなたの仕事が終わらないのは「見えない時間」を考慮に入れていないから(滝川徹 時短コンサルタント)
『細分化して片付ける30分仕事術 (滝川徹 著)』
「今日も全然仕事が終わらなかった……」 予定通り仕事が終わらない時、自分の能力の無さを嘆く人も多い。しかし実は、問題は能力ではない。仕事の計画の立て方にある。 そう語るのは時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術 』より、多くの人が見落としている「見えない時間」の解説を、再構成してお届けします。
■1日の6割を占めるルーティンタスクと割りこみタスク
「ルーティンタスク」とは、一定の頻度でくり返し行うタスクのことだ。クライアントがいれば、メールやチャットのチェックを毎日行うだろう。それらのチェックはルーティンタスクと言える。 そのほかにも、毎日の日報もルーティンタスクだ。週に1回レポートを書く。月に1回経費精算をする。これらもルーティンタスクとなる。そして意外と見落とされがちなのが、突発的に発生する「割りこみタスク」も実はルーティンタスクということだ。 「割りこみタスク」とは簡単に言えば、自分が今やっていることを中断して対応せざるを得ない(割りこまれる)事象を指す。たとえば同僚から相談事をされる。クライアントからの電話に対応する。上司から急な仕事を頼まれる。これらは全て割りこみタスクだ。 1日に割りこみタスクが「全くない」という人はまずいないだろう。他者との関わりのなかで仕事をする以上、毎日割りこみタスクに一定の時間を取られるのは仕方がない。突発的な業務に毎日時間を使っているなら、割りこみタスクもルーティンタスクなのだ。 仕事のスケジュールを組む際は割りこみタスクを含めたルーティンタスクもあらかじめ時間を見積もり、組みこんでおかなければならない。なぜならルーティンタスクには必ず一定の時間を費やすからだ。具体的な例をあげて説明しよう。 長時間労働に悩み、改善に試行錯誤していた頃。私はタスク管理ツールを使って毎日仕事中に時間・行動の記録を取っていた。 2013年のデータを見返すと、ルーティンタスクに費やしていた時間は1日あたり平均179分。さらに割りこみタスクに費やしていた時間は133分だった。なんと合計で312分、1日に5・2時間費やしていた! 9時から18時まで9時間業務の中で、自由に使える時間は3・8時間しかない計算になる。3・8時間しかないのに9時間分の仕事の計画を立てればどうなるか。当然5・2時間が溢れてしまう。 このことに気がついた私はタスクリストを作る際、ルーティンタスクにかかる時間を最初に「天引き」してからタスクリストを作るようにしていた。 私の場合、1日に5・2時間ルーティンタスクに費やすことは事前にわかっているのだ。ならばタスクリストを作りはじめる前に事前にこの情報をタスクリストに盛り込んでおけばいい。 たとえば当時の私は毎朝出勤して朝一番にタスクリストを10分程時間をかけて作っていた。この場合「タスクリストを作る」というタスクを見積時間10分で事前に作っておく。それと「昼休み」。昼食の時間もあらかじめ組みこんでおく。 割りこみタスクに関しても同様だ。過去のデータから1日に133分程度費やすことはわかっている。なので、事前に133分をタスクリストに組み込んで予定しておく。 こうしてルーティンタスクと割りこみタスクに費やす時間を事前に「天引き」しておく。そうして残された時間に、今日実行するタスクを割り当てていく。これこそが現実的な、実行可能なタスクリストを作るために最も大切なことになる。 先程私の労働時間の例でも書いたが、実際に自由に使える時間(私はこれを「本当の持ち時間」と呼んでいる)が3・8時間しかないのに9時間分のタスクをリストに割り当てれば、予定通り終わらないのは当然だ。この5・2時間が残業という形でしわ寄せとなる。 タスク管理をはじめる前の私もそうだったが、世の中の大半の人が「今日も全然仕事が終わらなかった……」と挫折感を感じる原因がこれなのだ! タスク管理をしていない人はルーティンタスク、特に割りこみタスクに費やす時間が本当の持ち時間を圧迫していることを正しく認識していない。1日の業務時間を、頭の中で大雑把に見積り立ててしまっているのだ。 しかし「本当の持ち時間」は通常、認識しているよりもはるかに少ない。はるかにだ。予定通り仕事を終えたいなら言うまでもなく、その予定が現実的である必要がある。 「現実的である」ということは、予定が本当の持ち時間に基づいているということなのだ。