A千葉戦　ディフェンスする加納誠也（左から2人目）＝5月、千葉ポートアリーナ

　“昇格請負人”として静岡の地を踏んで5年。最大のミッションに挑む。5日に開幕するバスケットボールBリーグ2部（B2）。2季続けて静岡の主将を務める加納誠也（35）は「B1昇格しか見ていない」。チーム最古参になったベテランが、森高大新監督（35）を迎えた「新生ベルテックス」を最高峰の舞台に導く。 　2020年春、B2福岡との契約が満了した加納は静岡を新天地に選んだ。16年から4季所属した福岡では当初B3だったチームを2年でB1に昇格させた実績がある。オファーは複数あった。 　だが、その中で、先天性心疾患のある長男大誠君が専門医療を受けられるのは県立こども病院がある静岡だけ。当時の静岡はB3初年度を10位。競技環境や盛り上がりはまだプロとは言い難かったが、「家族と安心して暮らせて自分に使命がある。強い覚悟も持ってきた」。 　それから5年。クラブは右肩上がりで成長した。22～23年にB2昇格。昨季は初年度からプレーオフに進み、平均観客数は2千人を超えた。私生活でも7歳になった大誠君はスポーツができるようになり、9月には第3子の次男悠誠君も誕生。「静岡が家族を元気にしてくれている。今は恩返ししたいという思いが強い」 　26年に大改編されるBリーグ。所属カテゴリーは事業規模によって決まり、成績による昇降格はなくなる。現行体制のラストシーズンとなる25年をB1で戦うには、今季、昇格するしか道はない。 　福岡時代の18～19年。加納はB1で戦ったシーズンを鮮明に覚えている。「ファンの歓声、街の期待感がそれまでとは大きく変わった。改編で（トップカテゴリーに）参入するのと、昇格するのは全く違う」。プロバスケ文化が根付き、新アリーナ構想が進む静岡で、その熱狂感を再現したいと強く思う。 　同い年の森監督から主将を頼まれた今季、強力なリーダシップで新指揮官と若手の橋渡し役になるとともに、コートでは屈強な外国人を相手に体を張ってゴールを死守するつもりだ。「最も難しいB1昇格が、自分に残された使命」。「マイホーム」と表現する静岡で悲願を果たす。 　かのう・せいや　1989年4月9日生まれ。愛知県出身。安城学園高から筑波大、三菱電機などを経て、16年からBリーグ福岡に所属。20年に静岡に移籍後は、196センチ、95キロのフォワードとして強靱（きょうじん）な守備と、効果的な3点シュートでB2昇格に貢献した。35歳。