「春の東邦」と「春の広陵」 なぜセンバツにめっぽう強いのか
阪神甲子園球場で開催中の第95回記念選抜高校野球大会は後半戦に入り、センバツにめっぽう強い東邦(愛知)と広陵(広島)も勝ち進んでいる。両チームとも夏の甲子園優勝に不思議と縁がないが、センバツでは東邦が最多の優勝5回、広陵も3回の優勝を誇り「春の東邦」「春の広陵」と称されるほどだ。 【似てる?プロで活躍の東邦ナインの兄や父】 東邦のセンバツの歴史は1934年からで、いきなり初出場優勝を飾った。その後も41年まで連続出場し、すべてベスト8以上。39年と41年に優勝し、38年は準優勝。強豪チームの仲間入りを果たした。 平成最初の大会となった89年は前回大会で準優勝し、後にプロ野球・中日に入団した山田喜久夫投手が健在だった。上宮(大阪)との決勝では延長で逆転サヨナラ勝ちを飾った。平成最後の2019年は中日にドラフト1位で指名された石川昂弥選手が投打にわたって活躍して優勝した。今大会は石川選手の弟・瑛貴選手(3年)が同じく主将として出場している。東邦は27日までで春通算58勝。あと1勝すれば中京大中京(愛知)を上回り、センバツ勝利数が単独1位となる。 19年センバツで優勝監督となり、現在は総監督の森田泰弘さん(63)は「負けない野球というのを先輩から教えてもらって、できたら勝てるんだというのが引き継がれていると思う」と春に強い理由を説明する。その一つが機動力。伝統的に機動力を強みとしてチームを作り上げ、前チームからしっかり引き継ぎができていれば、春の時点でチームカラーの完成度で他の高校を上回ることができるという計算だ。 優勝した19年は5試合で11盗塁をマークした。「機動力を攻撃の柱にしてきた。新チームになってその攻撃を展開することで好成績を収められる。走ることができれば勝てるし、走られたら逆に負けるというのが基本にあると思う」と森田さん。スランプのない足を使った攻撃力を発揮することが春優勝への近道とする。 広陵は夏の甲子園で決勝進出を4度果たしながらいずれも敗退した。一方、センバツは1926年に優勝すると、91年に2度目の優勝。直近では、巨人で活躍した西村健太朗投手を擁して2003年に制覇。決勝は横浜(神奈川)に15―3で大勝した。 90年からチームを率いる中井哲之監督は「(夏から)短期間でのチーム作りは非常に難しい」としながらも、「部員数が多いので競争して、その競争した後にみんなが納得して、センバツが終わるまでは自分の仕事を一生懸命やってくれるのがいい伝統になっている」と語る。チーム内での切磋琢磨(せっさたくま)が相乗効果を生み、控えに回った部員の献身的な姿勢が、チーム力のアップにつながっているとした。【藤田健志】