「ここ10年してなかったのに…」初優勝を飾った臼井麗香が抱いていた「勝てる兆し」と「再燃した夢」
渋野日向子、小祝さくら、勝みなみ、原英莉花、畑岡奈紗…と、女子ゴルフ界を牽引する’98年生まれの「黄金世代」にまたひとり、ヒロインが誕生した。3月下旬に開催された『アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI』でツアー初優勝した臼井麗香(25)。頂点に立てたのは同期の中で14番目と遅咲きだった。 姉だけでなく、妹も……姉の麗香とプロを目指す蘭世さんの「美しすぎる姉妹」 取材で訪れた4月13日は「横浜SOGO」で行われた自身がデザインしたファッションブランド「チェルクラッシー」の1日だけの店頭イベント。プロテストを受験する予定の妹・蘭世(21)さんを店長にして、脚部がシースルーの赤いドレスにチャンピオンブレザーを着て販売をサポートした。商品を購入した特典としてお客さんと一緒にレプリカトロフィーを手に記念撮影に応じるなど売上に貢献した。 すでに優勝している同期には遅れをとっていたものの、優勝の兆候はひそかに年明けから始まっていた。 「ここ10年していなかったのに、いきなりホールインワンを2回したんですよ。何か今年は違うぞ、みたいに思っていて」と良い流れがきていることに「乗っちゃった!」と語った。 “良い流れ”がきていただけではない。今シーズン前にはトレーニングで肉体改造を図って体重を4キロ増量させ、体脂肪率を1.5%ダウンさせていた。 「SNSには頑張っているところを載せたくなかったんです。キラキラしているところだけ載せたかったから…だってこの見た目なんですよ!アンチが多かったんで…」 他の女子プロゴルファー同様、優勝を目指して日々、過ごしていても、勝てないときは心ない言葉が並び、臼井の心は傷ついた。 〈スポーツマンらしくない見た目はやめろ〉 〈トレーニングしていない〉 そんな批判的な言葉を目にした臼井は「(私は)トレーニングするキャラじゃないしな。それは求められてないかも」と、SNSにはあえて載せなかった。でも、優勝して約3週間が経つ最近は「優勝したらアンチが減ったかな」と実感した。 表面上は同じ“心ない”言葉でも、切磋琢磨してきた「妹分」の言葉は、心に染みた。初優勝したとき、海の向こうからスマホを通してお祝い電話がかかってきた。 「優勝するキャラじゃないのに何やっているの!」 テレビ電話の相手は東京五輪銀メダリストで米女子ゴルフツアー参戦中の稲見萌寧(24)。スマホ画面の向こうでは移動中の車内で親友がずっと涙を拭いていた。ふざけた言葉のように思えるが、2人は姉妹みたいな身内のような特別な関係だ。 「萌寧なりの一番の褒め言葉。(私のことを)思ってくれているんだな、と。素直じゃないところが可愛いです」と、もらい泣きしながら祝福を受けた。稲見は、日本ウェルネススポーツ大学の1年後輩にあたる。 「萌寧は後輩なんですけど、面倒見られているのはこっち、みたいな」 練習ラウンドのアプローチ練習で臼井はメダリストの技を伝授され、「(教わった通りにできないときは)『言う事聞いて!ホントに!』とキレられるんです」と、笑い飛ばす。その妹分も挑戦した米ツアーについても語った。 「小6のときに世界ジュニアに出ていて、将来は自分も海外でと思っていたんですよ。でも、相当いい成績を出さないと行けないんだなって、プロになって現実を知って……」 半ば諦めかけていた夢だった。 「全米の予選会はリランキングの関係でエントリーしていないんですけど、海外の試合にチャレンジしたい。全部出るとかじゃなくて、1試合でもいいから周りの選手(海外で活躍する日本人選手)とか海外の選手と、そういう雰囲気を味わいたいな」 今回の優勝で小さい頃の夢が再燃した。 ◆臼井麗香(うすいれいか)1998年12月7日生の25歳。栃木県鹿沼市出身。日本ウェルネススポーツ大学卒業。所属はフリー。3歳から10年間はバレエやボイスレッスン、ジャズダンス、ミュージカルを習ってタカラジェンヌを目指す。祖父の影響で9歳からゴルフを始め、’18年にプロテスト合格。稲見萌寧、渋野日向子、原英莉花らと同期となる花のJLPGA90’期生。’98年度生まれの黄金世代でもある。身長158㎝、51キロ。愛称は「れいちぇる」 取材・文・写真:戸加里真司
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