マイナス金利解除の日銀、今後の方向性は欧州の前例が参考になる公算
ユーロ圏のインフレ率は22年10月に10.6%でピークを付けたが、この数字は大きな域内格差を覆い隠しており、バルト3国のインフレ率は一時20%を超えた。
インフレ加速でトレーダーは追加利上げを一段と織り込むようになり、金融政策変更への感応度が高いドイツ2年債利回りは08年の世界金融危機以降で初めて、10年債利回りを上回った。この現象は現在まで続き、成長見通しに対する投資家の懸念を示している。
ユーロ圏の生活費の危機はいまやほぼ収束したが、インフレ率はECBの2%目標にまだ至っていない。
デンマーク、スウェーデン
ECBの金融政策をなぞることが多いデンマークも、マイナス金利を22年9月に脱却した。スイス中銀よりも何週間か早かった。
デンマークは10年前にマイナス金利を開始し、世界で最も長く続けていただけに、それを終わらせる決定の影響はより大きかった。資産価格バブルと痛手を負った銀行が後遺症として残った。
欧州でもう一つだけマイナス金利を採用していたのが、スウェーデン中銀だ。同中銀はマイナス金利を5年間継続したが銀行や年金基金の負担を見て取り、利点よりも害が多いと判断して19年12月にはマイナス金利を解除した。
プリンストン大学のマーカス・ブルネルマイヤー教授は当時、マイナス金利が機能するのは「非常に限られた国」で、「一部の国は決してマイナスにすべきではない」との見解を示していた。
この見解は、主要7カ国(G7)の他国で事実上、共有されている。カナダと英国、米国は一度も金利をマイナスにしたことがない。オーストラリア準備銀行(中銀)は新型コロナウイルスが引き起こしたリセッション(景気後退)時期に金利を0.1%まで引き下げ、独自のYCCを導入した。
日本は世界の金融政策で長らく異端児であり続けたため、欧州の例があてはまるのか疑問の余地がある。だが、もしそうであるなら、マイナス圏からの脱却は始まりに過ぎない可能性が高いことを覚えておくべきだ。